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課題別指針



カ テ  ゴ リ


アプローチと重点項目

更  新  日


2012/05/14 10:09



分 野 課 題


情報通信技術 情報通信技術






主  管  部


経済基盤開発部、情報通信技術課題タスクフォース






ト ピ ッ ク ス

















開発戦略目標1 IT政策策定能力の向上





開発戦略目標1 IT政策策定能力の向上

 中間目標1-1 ICT政策の確立
 中間目標1-2 ICT産業育成政策の確立
 中間目標1-3 利用者保護政策の確立



開発戦略目標1 ICT政策策定能力の向上

 ICT政策の目的には、経済性向上(Economic)と社会的配慮(Social)の二つの観点があるとされている。前者については、自由競争による供給の最適化の実現を促進することであり、後者については、経済効率追求により軽視されがちな利用者側における公平性への配慮や、利用条件の適正化といった社会的な配慮を行うことである。
 なお、情報通信分野における政策として、サービス又は製品を提供する側(通信事業者や企業など)の業界全体の発展への寄与だけでなく、これらを利用する側の公平性及び保護にも配慮が求められる。
 以上により、表2-2の通り中間目標として以下の3つを設定した。

表 2-2 ICT政策策定能力の向上 中間目標関係図
政策の目的
中間目標
Economic(供給の最適化)

ICT政策の確立
(通信インフラ)
ICT産業育成政策の確立
(ハード・ソフト産業)
Social(社会的配慮)利用者保護政策の確立

中間目標1-1 ICT政策の確立

 先進国を含む各国の情報通信事業の近代化及び自由化のプロセスには様々な形態が存在するものの、本報告書においては、日本を含む多くの国で見られる形態である、国営公社→民営化独占→競争原理の導入という段階的プロセスについて、それぞれの段階における政策課題を論じることとする。国営公社→民営化独占→競争原理の導入の各段階における一般的な問題点及びその解決策は、下表2-3のとおり整理できる。

表 2-3 各段階における問題点および解決策
段階
一般的な問題点
解決策
国営公社・投資資本の不足
・技術革新・増大する需要への対応能力不足
・効率追求のインセンティブ欠如
・事業採算性の向上
・資本増強
・事業運営の適正化(組織・経営改善)
民営化独占・競争環境がない
・政府による株式保有とコントロール
・料金設定・品質の監視
・株式保有率の低減
⇒民間投資・外資導入の拡大
競争導入・シェア優勢な事業者(特に旧公社)による市場支配
・新規参入の阻害(法律・制度上の制限)
・接続協定の認可・監視
・適正な許認可制度の導入

 国営公社の段階では、投資資本の不足の問題が顕著である。発展途上国では情報通信サービスの期待収益率が高い にも関わらず、十分な投資が行われていない。民営化は抜本的な解決策と成り得るものの、通信インフラの政治的重要性や国営公社人員の雇用確保などの諸事情により、急激な民営化実現は困難であることが一般的である。かかる状況では、限られた投資資本の有効活用のためにも、国営公社の事業採算性を向上させることがまず必要であり、適正かつ合理的なインフラ整備計画の策定や経営健全化のための支援が重要となる。 国営公社は、技術革新や増大する需要への対応能力や、サービス向上や経済効率追及のためのインセンティブも欠落していることが多く、サービスを受けたくても受けられない積滞の問題が多く見られる。インフラ整備計画については、事業採算性を念頭に、短期的・長期的の両方の視点から適正な規模及び技術で策定されねばならない。これら諸条件が整備された後に、民営化のための法律や制度的な枠組みの準備が始まる。なお、民営化を実施しなくとも、コンセッション(特権)付与による民間資本の活用や、北欧での国営公社を維持したままでの民間による市場参入の許可なども、国営公社段階における問題解決の政策オプションとして存在する。

 民営化後の段階では、通信サービスの品質及び料金について事業者の監督が重要である。国営公社の民営化後は、競争導入前の体力づくりを行う意味でも、旧公社に一定期間の市場独占が許容されることが多い。市場原理が働かない状況下では、料金や事業計画の認可によって、低廉かつ良質のサービスが提供されているか否かの監視が必要となる。この段階では、多くの場合政府による株式保有も行われるが、政府による株式保有率を漸次低減し、民間投資や外資導入を図っていくことも必要である。

 競争導入の段階では、旧公社による市場独占を許容していた規制・制度を取り払って市場への新規参入を促すとともに、公正な競争環境を創出することが重要である。新規参入事業者を認可するための事業法を施行し、国内資本のみならず外国資本による事業参入も認めるなど、段階的に競争を促進し、健全な産業の発展を目指していく。公正な競争環境創出のために特に留意すべきは、旧公社による市場コントロール力の排除である。この点への対策が講じられなければ、競争導入のための制度的な枠組み形成だけでは、十分な競争は起こらない。旧公社は、既設インフラ、特に利用者側終端の回線を保有しており、新規参入事業者がEnd to Endでサービス提供をしようとすると旧公社との接続が必要となる。ここで接続協定等が公正に締結されているかどうかの公の立場からの監視が必要になる。接続料金や条件の設定に関し、市場参入を阻害するような行為がないかのチェック機能が政府に求められる。

 ICT政策の重要なポイントとしてデジタル・デバイド解消のための政策策定がある。国内における情報格差には、地域格差だけでなく、社会的弱者(貧困層、女性、マイノリティ、障害者など)における格差も存在する。それぞれの格差を是正し、公平にICTの恩恵を受けられるようにすることは、重要な政策課題である。一例として、バングラデシュのグラミンフォン社は、グラミン銀行などからの共同出資により1997年から低価格で女性に携帯電話の販売事業を開始してきた。女性たちは1台の携帯電話で事業を始められることから、今では多くの村で家族経営の事業となっており、農産物相場の確認や外国への出稼ぎ家族との会話など、今まで生産手段をもたなかった女性や障害者の自立を促進している。

 地域格差については、採算性が低い地方部のインフラ整備に関し、公的に支援する枠組みが必要である。固定通信網が独占事業者により運営されている場合には、料金や事業計画の認可の際に地方部への適正配慮がなされているか否かの監査が必要である。他方、競争が導入されている国では、利用者から一律の基金を徴収し、地方部に自発的にインフラ整備を行う事業者に対して補助金として支出できる仕組みなど、広くあらゆる人々にサービスを提供する枠組み(ユニバーサル・サービス 制度)の形成が重要である。

 社会的弱者に対する配慮として、低所得者層や身体障害者(視覚や聴覚)を対象とするインターネット接業業者(ISP)サービス等の設立・運営を公的に支援する制度の確立が有効である。また、NGO等との連携により、社会的自立を促進できるコンテンツ開発を助成したり、インターネット普及を支援したりすることも政策として有効である。

 ICT政策に関し、日本は2010年6月に、2020年度を目標年次とした「新成長戦略」を策定し、ICTは新たな革新を生む基盤であると位置づけている。その中で「光の道」構想は、すべての世帯にブロードバンドサービスを提供しようとするもので、ICTの活用を通じて経済の生産性を高め、豊かな社会の実現を目指すとしている。

 以上のように、ICT政策を策定するためには通信インフラ整備計画に加え、通信事業者への影響、国内格差の解消、国家計画との整合、市場動向など多方面からの視点が必要になることから、ICT政策に関する支援にあたっては周波数の再編成を含めた法整備支援、ICT利活用に対する国の戦略策定支援、多機能化する携帯端末やクラウドコンピューティングについての規制など、多角的な検討が重要である。

 また、電気通信事業者(キャリア)の置かれている事業環境は携帯端末の急激な普及によって大きく変化している。これは、モバイルデータ通信量の著しい伸びによって、その需要を満たすための設備投資の額は、通信量の増加に伴う料金収入に比較して大きくなる傾向があり、この差を縮小するために通信設備を有するキャリアはネットワークの維持管理の外部委託と設備共用をせざるを得ない状況が生じている。ネットワークの外部委託は、その保守および運用を外部に委託することでネットワークの維持管理コストを縮減することであり、設備共用は、設備を他者から借りるか他者と共同で所有することによってコストを削減することである。

 このような事業環境下では、通信設備の保守および運用を請け負うベンダーが生まれ、キャリアのパラダイムシフトが発生することから、ICT政策の策定にあたっては、業界の再編成も踏まえたうえで政策の提言をする必要がある。

JICAの取り組み
 情報通信政策にかかる取り組みは、政策アドバイザー専門家の派遣または技術協力が主となっている。また、国営公社段階の国においては、インフラ整備計画の策定支援を開発調査により実施している。ただし、いずれも協力実績は多くない。今後のJICAの取り組みを検討する上では、対象国の情報通信市場の段階に応じ効果的なモデルを構築する必要がある。
国内情報格差に対するこれまでのJICAによる取り組みは、通信インフラをいかに地方部に拡張するかというハード面に重点を置いており、今後は社会的弱者や地方部の住民にとって利用価値のあるコンテンツや、社会福祉に貢献するコンテンツなど、ソフト面の充実にも併せて取り組む必要がある。
一つの協力形態として、「インターネットによる地域情報化の推進調査」では、パイロット的に地方インターネットセンターを開設するなどし、地方部のデジタル・デバイドの解消に寄与する協力も展開している。

中間目標1-2 ICT産業育成政策の確立

 ICT関連産業をハード及びソフトウェア産業と定義し、電気通信サービスとは別に中間目標を設定した。電気通信サービス産業に比べて、インフラや設備偏重の度合いが弱く、市場参入バリアーも低いため、国と事業者との関わりは大きく異なる。結論から言えば、あくまでも民間セクターが主役であって、不必要な規制の適用を回避し、必要最小限の政策に止めることが重要である。
 ICT関連産業の健全な発展には、以下を例としていくつかの重要な課題がある。
  ・オープンかつ活発な競争環境の維持
  ・民間投資・外資参入の促進
  ・技術的な公平性(Technological Neutrality)
  ・R&Dの助成
  ・知的所有権保護

 産業育成のための政策的な取り組みとして、投資や産業活動を促進するための税制や資金面での優遇措置が挙げられる。また、短期的に民間企業の採算につながらない長期的な視点でのR&D(研究技術開発活動)の促進・助成も重要である。
 技術的な公平性の確保については、先進各国でもアプローチが異なるものの、政策的に特定技術を推進するよりも、多様な技術間での競争を促進し、最適技術が自ずと淘汰される市場環境を提供/保持することが重要と考えられる 。

 知的所有権保護は、業界全体の新たな製品の開発意欲を維持し、国際的な市場としてのステータスを確立するには重要である。さらに、知的所有権保護については、規制や法律を導入するだけでなく、いかに定着させるかの制度構築が重要である。

JICAの取り組み
ICT政策アドバイザーやマルチメディア政策アドバイザーを途上国に派遣している。いずれもICT分野における研究開発活動の振興を主目的としており、政府としていかに技術開発を促進するかについて政策的な助言を行うものである。研究開発という観点では、対象国もレベル的に限られる。

中間目標1-3 利用者保護政策の確立

 ICTに関連するサービス及び製品を利用する者(個人・組織)を保護することは、健全な産業発展に重要な政策課題となる。個人情報保護や倫理規制、不当な契約や取引の監視、不正アクセス防止などのセキュリティ対応が重要なテーマとして挙げられる。いずれに関しても、制度・規制の枠組み形成だけでなく、いかにエンフォースするかの組織的な能力形成も必要であることから、組織の情報セキュリティポリシーが重要となる。

 情報セキュリティポリシーには、情報セキュリティ基本方針および情報セキュリティ対策基準を含む。情報セキュリティ基本方針は、組織における情報セキュリティ対策に対する根本的な考え方を示すものであり、組織がもつどのような情報資産をどのような脅威からどのようにして保護するかを理由とともに明確に示すことによって、組織の情報セキュリティに対する取り組みを示すものである。また、情報セキュリティ対策基準は、基本方針で示した情報セキュリティを維持するにあたり必要となるアクション項目や判断基準など、基本方針を実現するための対応策を示したものである。

 なお、情報セキュリティの策定に関しては策定後もPDCAサイクルによって改善を続ける必要がある点に留意すべきである。

JICAの取り組み
少数ではあるが政策アドバイザー型専門家による協力実施例がある。特に、情報セキュリティポリシーの策定は途上国において今後ICTが普及していく中でその重要性を増すものであることから、利用者保護法律整備ならびに知的所有権保護諸制度の確立と合わせ技術移転を図る。

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