印刷用画面へ
課題別指針



カ テ  ゴ リ


援助方針

更  新  日


2012/05/14 10:36



分 野 課 題


情報通信技術 情報通信技術






主  管  部


経済基盤開発部、情報通信技術課題タスクフォース






ト ピ ッ ク ス

















【放送】JICAの協力の方向性 3-1JICAが重点とすべき取り組みと留意点





JICAの協力の方向性

JICAが重点とすべき取り組みと留意点

 放送分野における協力の基本的な考え方は、放送の「基盤整備」と「利活用」の2つに分けて考えられる。放送の基盤整備とは、放送を発信/受信するための基盤を整備し、能力を向上するプロセスであり、第2章に掲げた開発戦略目標においては、「1.放送政策策定能力の向上」,「2.放送組織・人材の育成」,「3.放送施設・機材の整備」の3点に該当する。放送が相手国の国民に裨益するためには、まずはコンテンツが発信され、受信されることが必要である。そのために、持続的にコンテンツが送受信されるためのヒト・モノ・カネを整えて、以下の利活用に繋げていくことが肝要である。

 放送の利活用とは、第2章に掲げた開発戦略目標においては、「4.各分野への放送活用」に該当する。放送の基盤整備によってコンテンツが送受信される環境が整ったとしても、“良い”コンテンツが発信されなければ、相手国に裨益し得ない。基盤整備によって器を作ったとして、次に中身を充実させるプロセスに移っていくべきだろう。ICTと同様、放送も開発途上国におけるエンパワーメントの“ツール”であることに留意すべきである。


図3-1 放送分野における協力の流れ


 JICAの放送分野における協力においては、上図3-1に示すように「放送の基盤整備」を土台として、その上で然るべき分野における「放送の利活用」を図っていくことを基本的な考え方とする。放送の基盤整備と利活用のいずれにおいても、国際機関や民間企業、NGO等と協調し、連携しながら、JICAの協力が大きな正のインパクトを出せる分野を考慮して協力を行っていく。

 放送の基盤整備に当たっては、政策策定支援、施設・設備の整備、組織・人材育成がバランスよく整備されることが重要である。下図3-2のレーダーチャートに示されるように、相手国の現状や他ドナーの支援状況等を充分に調査し、3本柱のバランスを保ちながら、大きな三角形を作っていくことが望ましい。



図3-2 基盤整備3点セットのバランス例(レーダーチャート)

 放送の利活用に当たっては、相手国全体の開発計画などに基づきつつ、相手国の状況に応じて重点的に取組むべき分野から取組んでいくべきである。放送は“ツール”であり、相手国にとって最終的にどの分野に裨益することが求められているかを念頭に置いておかなければならない。つまり、放送分野協力の最終目標(上位目標)は他分野の目標となることになる。ここから遡って、基盤整備に当たって必要となる機能の質・量を求めていく必要がある。また、放送は、第1章でも述べたとおり、ICTとの関連が非常に深いため、“ツール”として導入するに当たっては、相手国の状況などを踏まえながら、ICTと放送の双方のどちらを導入するか(または双方の協力を行うか)を検討し、適正な技術を導入すべきである。

・ 放送分野協力とキャパシティ・ディベロップメント

 全JICAとしてキャパシティ・ディベロップメント(Capacity Development : CD)を重視する方針であり、放送分野協力においても、また、これを協力の基底となる概念とする。JICAにおいては、CDとは、途上国の「課題対処能力」が「個人、組織、社会などの複数のレベルの総体として向上していくプロセス」であると捉えている 。ここで言う「課題対処能力」とは、「目標を設定し達成していく力」+「開発問題を同定し解決する力」と定義している 。すなわち、途上国自身が主体となって自ら開発問題を解決していくことが重要である。

 放送分野協力においては、CDを重視する視点として、以下の2点を挙げる。第一に、相手国の放送分野の課題対処能力を向上させるという視点である。これは、上記の放送の基盤整備とも対応し、「放送政策策定能力の向上」、「放送施設・機材の整備」、「放送組織・人材の育成」の3点の戦略目標と、これに係る協力を進めることによって、相手国の政府、放送関係省庁、放送局、放送人材等のキャパシティを高めていくプロセスである。第二に、相手国の全体的な課題対処能力を向上させるという視点である。これは、上記の放送の利活用とも対応し、「各分野への放送活用」の戦略目標と、これに係る協力を進めることによって、相手国全体のキャパシティを高めていくプロセスである。

 上記のCDに係る考え方から、放送分野においても、放送に携わる個々人の能力向上のみを目標とするのではなく、行政における放送政策・放送法などの制度、放送局の組織や経営体制、それら放送に関する総合的な力の向上が必要である。持続的・内発的な相手国のオーナーシップを醸成するには、長期的な視点での協同体制の確立と仕組みの制度化を考慮していかなければならない。

 下記表3-2に示した個人レベルのキャパシティ、組織レベルのキャパシティ、制度・社会レベルのキャパシティのどれが欠けてもCDは実現できない。これらは相互関係として捉えるべきであり、常に総体としてのキャパシティを意識する必要がある。

表3-2 放送分野におけるキャパシティ
レベル
キャパシティの定義
放送分野に係るキャパシティ
個人自らの知識と技能を用いて、行動目標を設定して達成する意思と力・ 個々の放送人材の知識、言語能力、技能、技術、知恵、意思、責任感、リーダーシップ
・ 放送倫理
・ メディア・リテラシー
組織特定の目的を達成するために必要な意思決定プロセス、マネジメントシステム、組織文化、体制・ 人的資産(放送分野の技術・管理・計画の各部における人材、人材育成)
・ 物的資産(放送分野の実行に必要な施設・機材・土地・資金・資本)
・ 知的資産(放送分野におけるノウハウ・暗黙知、統計情報、文献、マニュアル、リーダーシップ、オーナーシップ)
・ 組織内の共通した問題意識
制度・社会個人や組織レベルの能力が発揮されるために必要な環境や条件、一組織を超えた政策や戦略策定・実施にかかる意思決定プロセスやシステム、遂行のための枠組み・ 公式な法制度(放送法、放送の定義と管理責任の所在を定めた法律、政令、条例)
・ 公正な規制や基準(周波数割り当て、放送倫理基準)
・ 政策と政治(国・地方レベルでの明確な放送政策、政策目標、政治)
・ 社会インフラ(ユニバーサル・アクセス基金、電力、ラジオ/テレビの普及率)
・ 非公式な制度(慣習、歴史的制度、タブー、規範)
・ 放送に係る社会組織(CBO、NGO、団体)
・ 公式または非公式の放送市場・産業
・ 放送教育
・ 住民・コミュニティの意見の反映を保障するシステム(良いガバナンス)、パートナーシップ
・ 社会的なオーナーシップ(世論・合意・協力意識)

 プロジェクトにおいては、実際の日々の活動を通じてCDの主体の課題対処能力(キャパシティ)を向上させ、その結果としての成果(パフォーマンス)を生み出し、その成果の積み重ねが開発課題の解決というインパクトに帰結するという「CDのプロセス」(図3-3参照)を常に意識することが重要になるであろう。

 また、それ以前に、特にプロジェクトの形成時において、個人レベル、組織レベル、社会・制度レベルのうち、どのキャパシティに働きかけるべきかを明確にし、CDの概念に沿った開発課題の解決プロセスを意識して現状を分析することや、現状とのギャップを内発的に埋め、最終的な「あるべき姿」を目指す「CDのストーリー」を組み立ててみることが重要である。以下、図3-4に、実際にJICAにて実施した放送分野における技術協力プロジェクトから、「CDのストーリー」を例示する。


出典)「キャパシティ・アセスメント・ハンドブック」(2008)をもとに筆者作成
図3-3 開発の全体像とCDプロセス



(出典)「キャパシティ・アセスメント・ハンドブック」(2008)を参考に筆者作成
図3-4 放送分野におけるキャパシティ・ディベロップメントのストーリー例

 これまで述べてきたとおり、JICAは放送分野において様々な支援を行ってきた。以下に、各開発戦略について、これまでのJICAの援助実績を踏まえ、今後の支援の際の留意点とポイントをまとめた。

 昨今、途上国においてもインターネットが急速に普及してきており、ADSL、FTTH等の高速通信サービスが提供されるようになると、情報通信と放送との垣根は一層低くなるものと思われる。例えば、既に通信と放送の連携が始まっているわが国では、放送番組に対して視聴者が携帯電話やリモコン操作で投票を行う等、通信を活用した放送番組が企画されている。

 このような面では、ICTと放送は、エンパワーメントの“ツール”として共通する点も多くあるが、その一方で、情報の伝達方式、情報の同時性、情報発信者(匿名性)、必要リテラシーの高低といった点で基本的な性格が異なる点に留意が必要である(図3-5参照)。



図3-5 情報通信技術分野-放送分野の比較


 また、JICAにおける放送分野の協力は、相手国における最低限の基盤インフラを前提としていることに留意が必要である。例えば、放送の送信側・受信側の双方にとって最低限の電力インフラが整っていることが必要で、電力供給が不安定であることは放送分野協力のボトルネックとなり得る。しかしながら、放送の提供にあたり、必ずしも高度な基盤インフラを必要とするわけではなく、手巻きラジオ・ソーラーバッテリー駆動式ラジオ、ラウドスピーカー(拡声器)など、簡易な機材を利用し受信側のボトルネックを解消する方法もあるため、基盤となるインフラがない場合も、放送分野協力の可能性はある。


▲このページの先頭へ


前ページ:開発戦略目標4 各分野への放送活用 へ


目次に戻る






添 付  資 料


- 先頭へ戻る -