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カ テ  ゴ リ


援助方針

更  新  日


2012/05/14 10:38



分 野 課 題


情報通信技術 情報通信技術






主  管  部


経済基盤開発部、情報通信技術課題タスクフォース






ト ピ ッ ク ス

















【放送】JICAの協力の方向性 3-2今後の検討課題





JICAの協力の方向性

今後の検討課題

 2008年10月、JICAとJBICの海外経済協力業務部門が統合し、無償資金協力・有償資金協力・技術協力の3スキームを総合的に実施する援助機関として生まれ変わった。これまでも、例えば、資金協力による放送機材の整備を、専門家による技術協力によって機材のフォローアップを行うという資金協力と技術協力の連携は行われてきているが、今後は、統合によるシナジー効果を生かすべく、放送分野においても各スキーム間での更なる連携が求められている。

 例えば、従来まで「放送施設・機材の整備」は無償資金協力スキームで、そして供与した機材の運用管理やそれらを活用した番組制作といった「放送人材の育成」への協力は研修員受入という技術協力スキームで、別々に実施されることが多かった。今後は、両スキームを有機的に連携させた協力を実施することにより、それぞれの地域、国や組織における特有の課題の解決に向けて柔軟に対応していくことにより、さらに大きなインパクトを生み出していくことができる。


図3-6 放送分野におけるスキーム連携(例)


 このように、各スキームの連携をよりシームレスに行っていくよう、どのような分野で放送を利活用していくべきかを協力準備段階から組み込んで企画、設計を行い、最適なスキームや協力のあり方を検討していくべきであろう。

 また、放送分野における個人レベルへの協力という観点からは、継続してボランティアを活用することも有効だろう。放送分野での青年海外協力隊(JOCV)の活動内容としては、省庁、地方政府や教育機関において、保健医療や教育分野の視聴覚教材やラジオ番組を作成する等が挙げられ、シニア海外ボランティア(SV)についても視聴覚教材の作成やデジタル機材の更新計画への助言や保守管理技術といった活動を行ってきた。これらは先に述べたキャパシティ・ディベロップメントのうち、「個人」「組織」に働きかける役割を果たしていると言える。

 そして特に、ケーススタディ4で紹介したように、放送を“ツール”として利活用していく場合には、情報通信・放送の視点からの検討のみならず、保健医療や教育等、放送を活用する分野の視点を踏まえた、分野横断的なアプローチが重要となってくる。放送案件実施の前提条件となる電力分野や、利活用の目的となる分野の知見も集約しつつ、案件を実施していかなければならない。JICAにおいては、分野ごとに課題部として知見が蓄積されているため、放送を利活用する場合には、JICA内の複数の部署で連携して検討することが、案件の成否に関わってくるだろう。

 放送は、不特定多数に対し、同時に情報を発信することができるという側面から、人権侵害を引き起こす危険性も高いため、放送人材の育成に際しては、単なる技術面での支援のみならず、コンプライアンス(法令遵守)の徹底、人権尊重を中心とした放送倫理などに配慮した協力が必要となる。国際的にみると、近年、放送分野においては、紛争予防や民主主義の促進の観点から、「第四の権力」として他の政治勢力の圧力を受けない、国家権力の「watch dog」としてのメディアをいかにして育成するかという課題に関心が移行している。今後は、JICAにおいても、メディアが特定政治勢力の影響を脱し、透明性の高い意思決定プロセスを構築する組織改革を支援するような協力が望まれる。

 また、これまでは、民主化が進んでいる国においてさえ、実際にはニュースや情報の流れの不均衡・歪み、情報の独占に伴う固有文化の喪失といった問題が発生してきた。しかしながら、例えばコミュニティラジオのように、技術的には高度でないものであっても、コミュニティレベルでの民主化や、それに伴う女性のエンパワーメントが少しずつ達成できるようになりつつあるため、今後はJICAにおいても、そのようなローカルレベルでの支援も望まれる。

 近年の放送を巡る状況としては、「通信と放送の融合」と表現されるように、インターネットの発達や放送のデジタル化によって、両分野の垣根が低くなってきている。それに伴い、例えば放送コンテンツをインターネット上で発信するなど、これまで別のものとして協力が実施されてきた情報通信と放送を同時に実施することが、プロジェクトの効率化に繋がることも考えられる。一方で、放送の規制緩和により民間局やコミュニティ局が増加し、主要都市では視聴者を獲得しつつあるが、私的企業である民間メディアは、利潤追求のあまり、広告主である企業に対して批判の目が弱くなりがちであるため、民間メディアと一線を画す意味で、国営放送としての方針と役割を確立するような支援の検討が必要である。また、放送分野では先を行く東南アジア地域の経験を、今後発展していくアフリカ地域に活かすという目的において、デジタル放送への移行、デジタル技術を利用した番組作成などの分野において、南南協力の可能性を拡大していくことも考えられる。

 さらに、昨今では、途上国においても民営化の流れが強まってきているが、民営化の過程では収益性の高い都市部に放送網が集中し、その結果、地方部において放送インフラが過疎化する恐れもある。そのため、ユニバーサル制度のように、過疎地域においてもインフラとしての公共放送を確保できるように、政府としてどのように放送分野に関与していくのか、日本の事例も参考にしながらアドバイスを行っていく必要がある。例えば、わが国においてはNHKが経営基盤改善のために、ビデオ・オン・デマンドシステムといった、視聴者が見たい番組を選択し、放送局は視聴者の指示に従って番組を配信するような通信と放送の中間サービスを利用して独自収入を得ている事例もある。今後は、公共放送の自立発展性という観点からも、途上国に対してわが国の事例を紹介していくことも可能であると考える。

 JICAにおいては、「すべての人々が恩恵を受ける、ダイナミックな開発を進める」ことをビジョンとして掲げ、「1.グローバル化に伴う課題への対応」「2.公正な成長と貧困削減」「3.ガバナンスの改善」「4.人間の安全保障の実現」を4つの使命としている。また、そのための戦略として、「戦略1.包括的な支援」「戦略2.連続的な支援」「戦略3.開発パートナーシップの推進」「戦略4.研究機能と対外発信の強化」の4つを挙げている。放送分野における協力のあり方としても、これら4つの使命に対して正のインパクトをもたらすために、JICA研究所における研究やICTタスクフォースによる活動を通じて、より明確な方針と戦略を定めていくべきだろう。


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