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課題別指針



カ テ  ゴ リ


アプローチと重点項目

更  新  日


2004/09/27 10:37



分 野 課 題


民間セクター開発 中小企業育成・裾野産業育成






主  管  部


経済開発部、民間セクター開発課題タスクフォース






ト ピ ッ ク ス

















---開発戦略目標2 産業競争力強化に資する中小企業の育成







 中間目標2-1 経営基盤の強化
 中間目標2-2 経営革新・創業促進
 中間目標2-3 裾野産業の育成
 中間目標2-4 特定サブセクターの育成 
 中間目標2-5 中小卸・小売業の振興

 開発戦略目標2 まとめ



ここに分類される協力プログラムは、経済全体の生産性を高め、国際競争力のある産業を育成する見地から、潜在成長力のある中小企業(群)を対象に積極的な支援を行うことを主目的としている。


中間目標2-1 経営基盤の強化

人材、技術、経営ノウハウ、市場情報、資金・設備といった企業の経営資源の強化は、中小企業が抱える最も基本的な課題であり、JICAも積極的に支援を行ってきた分野である。国際的には、中小企業の経営資源強化支援はBusiness Development Service (BDS)と言い、その提供者はService Providerと呼ばれている。なお、国際的な援助の場では、BDSのターゲットは零細小企業であることが多い。

近年ドナー間ではBDSのあり方に関して活発な議論がなされている。世銀や複数の援助国(英、独)は、ドナーの支援を受けた公的機関による企業へのサービスの提供は持続可能性やサービス提供範囲の点で問題があったので、企業へのサービスの提供は市場経済の枠組みに則って行われるべきであると主張している(注1)。これはJICAがとってきた伝統的なアプローチ(政府機関への支援)と異なるものであるが、今後はこうしたアプローチに関する議論が存在することも踏まえながら、この分野の協力を進める必要がある。

また、個々企業の経営資源強化に加え、同業種企業または異業種企業をまとめて組織化を図ったり、産業集積の活性化を図り、その外部効果を利用することにより個々の中小企業の経営資源を高めようとしたりするアプローチもある。

(注1):
経営ノウハウ等は公共財ではなく、私有財なので、価格による市場での取引に委ねるべきとの考え方。政府やドナーは、そうした市場の育成を促進する支援(プロバイダーに関する情報提供やバウチャー方式によるユーザーへの補助)を行うべきであるとの議論。

JICAの取り組み

これまでのJICAの支援実績は、公的機関への支援を通じて、中小製造業の経営資源の強化を間接的に支援するものが中心である。ここが、AOTS(海外技術者研修協会)やJODC(海外貿易開発協会)等が行う特定企業への直接的な支援と大きく異なる点である。過去の協力の重点は、職業訓練校、試験検査機関、貿易促進機関等の公的機関に対する支援であり、その内容は指導者の育成、情報整備支援、設備機材の更新等を通じた組織・人材作りである。公的機関のキャパシティの拡充を通じ、結果として中小企業による経営資源へのアクセスの改善を企図するものであるが、中小企業だけが対象となっているケースは少なかった。近年は、中小企業のニーズにより適切に応える見地から、中小企業診断士の育成及びそのための制度作りを支援する案件(タイ)も実施されている。また、民間ベースを含め中小企業へのコンサルティングサービスの質を高める見地から、中小企業向けコンサルタントの資格認定制度の構築に関する制度協力(メキシコ)も実施している。なお、中小企業診断士制度は、わが国中小企業振興行政の柱の一つであり、時代の変化に応じ、進化を遂げてきた制度である。かかる経験の共有は、経営基盤の強化に関する支援の重要なツールとなり得る。

中小企業間の連携や組織化を通じ、経営基盤を強化するアプローチに関するJICAの支援実績は少ない。クラスター機能の強化を通じた中小企業振興協力(インドネシア)は注目に値するが、JICAベースで如何なる協力が可能かについては、引き続き検討が必要な状況である。

この課題に関連する案件形成上の留意点は次のとおり。

●相手国の実情とニーズに応じた対応
中小企業は、大企業に比し経営資源の面で種々の不利を抱えているが、その内容は千差万別であり一概に論じることはできない。案件形成に際しては、これらの不利の内容と程度及び不利が生じている理由を正確に把握する必要がある。その上で、かかる不利を是正するための方策として、誰が、どのようなアプローチで、何を実施するべきかを慎重に検討しなければならない。

●類似の活動のレビューを踏まえた案件の形成
この分野では、多くのドナーが様々な協力を行っている。また、途上国政府も独自に中小企業に対する種々の支援プロジェクトやプログラムを実施している。更に、民間ベースでも様々なサービスが提供されているケースが多い。よって、この分野の案件形成で最初に確認すべきポイントは、類似の活動の洗い出しと評価である。新たな支援を検討する場合は、これらの類似の活動の成果を客観的に評価し、必要な支援内容やアプローチを検討する必要がある。

●BDSへの対応
ドナー間で活発に議論されているBDSのアプローチを踏まえた案件形成を行う場合、JICAが、どこまで非公的な組織をカウンターパートナーとした支援ができるかがポイントとなる。BDSアプローチの推進には、制度枠組みに関する協力と民間セクターへの直接の働きかけが必要なので、開発調査と草の根技術協力事業をパッケージで供与する等の対応を検討することも一案である。

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中間目標2-2 経営革新・創業促進

新規事業への参入支援、ベンチャー企業の育成は、比較的工業化が進んだ途上国(ASEAN4(注2)、中国、東欧等)で極めて関心が高いテーマである。新しい分野の産業を振興し、産業の競争力を高めていく見地から、経営革新・創業促進への協力ニーズは今後も高まってくると思われる。

(注2):
タイ、インドネシア、マレイシア、フィリピン。

JICAの取り組み

中小企業の創業・経営革新の促進は、わが国においては他の施策に比して経験の浅い課題で、途上国に対する技術協力の実績も少ない。他方、近年の中小企業振興に関する開発調査では、途上国政府の要望に応じて政策提言の中に創業・経営革新に関する施策を含めるケースが増えている。開発調査のパイロット事業として、若手経営者の育成セミナーを実施したり、ベンチャーキャピタル育成の見地から投資事業組合法の制定支援を行ったりする事例もある。

この課題に関連する案件形成上の留意点は次のとおり。

●協力範囲の慎重な設定
創業・経営革新については、国内でも、教育・研究機関との連携による研究開発活動の促進やインキュベーション施設の提供等様々な施策が展開されているが、それら施策の有効性の確認には時間を要する。また、この分野は、技術協力の提供者となり得る組織・人材も限られているのが実情である。案件形成に際しては、かかる状況を踏まえ、協力可能な範囲を慎重に設計する必要がある。また、途上国によっては、もの作りの基礎的な力が十分でない、またはリスクマネーの供給が期待できない段階で、中小企業の創業・経営革新に過度な期待をする例も見られるので、こうした点にも留意が必要である。

●教育・研究機関に対する支援との連携
創業・経営革新に際しては、中小企業と大学等教育機関との連携(人材開発や試験研究)が重要である。JICAでは、人材育成の見地から大学等教育機関に対する支援を種々実施しているケースが多いので、教育分野に対する協力とのタイアップを積極的に検討することが効果的である。

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中間目標2-3 裾野産業の育成

裾野産業の育成に対する協力の基本的アプローチは、外国投資を含めた産業全体の効率の向上にあり、中小企業全体の底上げを直接的な目的とはしていない。また、裾野産業育成に関する支援では、個々の企業のレベルアップも不可欠であるが、国際的な民間投資の動向と国際分業の方向性を踏まえた育成戦略づくりが重要となる。裾野産業の育成に対するJICAの協力実績は多い。これは1980年代後半以降、外国投資主導型で工業化を進めてきたASEAN諸国等で、外資系アセンブラーに対し部品やコンポーネントを供給するローカル企業の育成の重要性が急速に増大したことが背景にある。裾野産業は途上国が外国投資の利益を広く享受し、産業構造を高度化するうえで欠かせない産業であり、また、外資系のメーカーにとっても、安価で良質な部品・コンポーネントが現地で調達できることは、企業の競争力確保の点で重要な要素となっている。この意味で、この課題は、JICAの重点協力課題として位置付けられている。

JICAの取り組み

この課題におけるJICAの協力は、裾野産業振興のためのマスタープランの作成、機械・金属分野の中小企業を支援する公的な技術支援機関の機能強化、企業間リンケージ強化のための下請企業育成支援やクラスター機能強化支援等がある。
マスタープランの代表例としては、タイ、インドネシア、メキシコに対する開発調査ベースでの裾野産業育成計画調査がある。また、公的支援機関に対する協力としては、インドネシアの鋳造技術センターへの協力やタイの裾野産業センターへのプロジェクト方式技術協力ベースでの協力がある。
企業間リンケージの強化に関する協力実績は少ないが、地場の工科大学及び日系企業と連携した下請企業の育成プログラム(ハンガリー専門家)やインドネシアで実施中のクラスター機能強化計画等が協力事例としてある。

この課題に関連する案件形成上の留意点は次のとおり。

●振興に関する基本的考え方の確認
裾野産業振興に係る案件形成に際しては、振興の対象となる企業層を予め確認することが重要である。我が方が通常想定している裾野産業振興は、外資系アセンブラーをコアとする調達ネットワークの中に地場の中小製造企業を組み込み、工業基盤の高度化を図ることを目的としている。このため対象企業には、短期間で調達ネットワークに加わる潜在力のある中規模企業(裾野産業予備軍)が含まれることとなる。他方、途上国政府の中には、こうした中規模企業が振興の対象となることを妥当としないケースも多い。実施段階になって、対象企業に関する彼我の認識の差が顕在化するケースもあるので、案件形成段階から中小企業振興における裾野産業振興の意義を確認しておくことが必要である。

●バイヤーとの連携
裾野産業の育成には、バイヤーたるアセンブラー、上位の部品サプライヤーまたはトレーダーとの協働が不可欠である。国際貿易の自由化が急速に進む中、これらバイヤーの国際競争戦略に合致した部品供給の可否が、裾野産業の成長発展に死活的な重要性を有している。この意味で、裾野産業の育成に際しては公的な支援機関の育成に加え、需要者としてのアセンブラーや部品サプライヤーと連携した育成プログラムを検討することも重要である。

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中間目標2-4 特定サブセクターの育成

裾野産業の育成とオーバーラップする部分もあるが、ここでは、特定の業種(サブセクター)に属する中小企業(製造業)を対象とした育成支援を指している。

JICAの取り組み

JICAの実績ベースでは、開発調査等による中小企業振興マスタープランの一環として、選定された特定の有望業種に対して特別な振興策を提言するタイプの協力が中心である。
他方、工業振興・輸出促進といった文脈で、例えば、繊維、木工、食品加工、皮革といった労働集約型の特定サブセクターの育成を目的とした技術協力も実施しており、こうした場合の対象企業は中小企業が中心になっている。
特定サブセクターに関する技術協力は、職業訓練センターを通じた熟練労働者の育成、技術支援センターを通じた試験検査や巡回技術師サービスの提供等が中心であるが、近年は、育成に関する行政の体制、法制度、税制、貿易関税政策等ソフト面での協力も増えてきている。

この課題に関連する案件形成上の留意点は次のとおり。

●サブセクターの選定
特定のサブセクターを育成対象として選定するには、当然のことながら、当該国の産業の実態はもとより、国際的な生産の分業体制や競争環境について深い知識と分析が不可欠である。案件形成段階では、特定サブセクターを支援対象として選定する理由とプロセスについて明確化するとともに、必要に応じ、そのための調査や研究から始めることも必要である。

●世銀・IMFによる支援との関係への配慮
一般的に、世銀・IMFは、中小企業といえども特定のサブセクターへの政府介入を妥当しとしない傾向が強い。案件形成の段階から緊密な対話を維持しつつ、こうしたアプローチの意義を繰り返し説明していく努力が必要である。

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中間目標2-5 中小卸・小売業の振興

中小の卸・小売業をターゲットとしたJICAの技術協力の実績は少ない。
商業の発展は一般的に、当該国の商習慣や固有の流通システムに規定される面が強く、JICAの技術協力で対応できる面は限られている。他方、卸・小売業は雇用問題と密接に結びついており、流通システムは製造業の価格競争力にも大きな影響を有する。
この意味で、今後は、IT等を活用した卸・小売業の近代化や合理化の面で、如何なる協力が可能かを検討していく必要がある。
なお、本課題に関連する案件形成に際しては、インフラ整備を含む街づくりの見地から広く取り組むとともに、NGOや自治体を通じた草の根的な活動により、地元の実状を反映した支援策を提示する必要がある。






開発戦略目標2 まとめ

中間目標2-1 経営基盤の強化
    指標:(1)経営・技術・人材に関する企業診断調査結果、(2)企業へ提供されるサービス満足度・活用度調査結果、(3)経営技術サービスの設立件数、受講者数
中間目標のサブ目標
プロジェクト活動の例
事例番号*
JICAの主たる事業
経営資源の強化
中小企業向け産業人材の育成(大学等教育機関・職業訓練校等)
12, 41
・職業訓練校の強化支援(プロ技、専門家)
公的機関による企業への経営技術指導
25, 28
・経営技術支援機関の設立・強化(プロ技・専門家)
公設技術支援機関の設立・強化
6, 25
・公設試験検査機関の強化(プロ技、専門家)
公的経営診断制度の整備
19, 29, 34
☆中小企業診断士制度の構築支援(開調、専門家)
×
民間ベースでの中小企業への経営技術サービス業(BDS)育成
交流・連携・組織化、集積の活性化
事業組合等の設立・育成
26
☆クラスター機能強化計画作成支援(開調)
企業間パートナーシップ(技術提携、合弁)促進
29
・中小企業振興マスタープランの作成支援 (専門家、開調)
×
中小企業工業団地の設立

中間目標2-2 経営革新・創業促進
    指標:(1)事業の創業、転換数の推移、(2)創造的事業活動の誕生数の推移、(3)各種支援制度に対する満足度・活用度調査結果
中間目標のサブ目標
プロジェクト活動の例
事例番号*
JICAの主たる事業
創造的な事業活動の促進
関連法制度(投資事業組合法等)整備
29
☆中小企業振興マスタープランの作成支援(専門家、開調)
直接金融市場の整備
42
・同上
大学・研究機関との連携強化
9
・同上
×
インキュベーション機能強化
クラスター機能強化
26
・クラスター機能強化計画作成支援(開調)
経営革新、創業の促進
起業家精神育成
24, 43
・中小企業振興マスタープランの作成支援 (専門家、開調)
ベンチャーキャピタルの設立促進
7, 29
・同上


中間目標2-3 裾野産業の育成
    指標:(1)裾野産業の企業数、付加価値生産高、従業者数の推移、(2)輸出企業、独立企業の現地調達率、(3)各種支援制度に対する満足度・活用度の調査結果
中間目標のサブ目標
プロジェクト活動の例
事例番号*
JICAの主たる事業
振興戦略の立案
マスタープラン立案
13, 15,
17, 22, 35
・工業分野振興開発計画作成支援(開発調査)
経営資源の強化【中間目標 2-1 (経営資源の強化) 参照】
技術者(機械・金属産業人材)の育成
6, 20, 25
・職業訓練校の強化支援、技術支援機関の強化支援(プロ技、専門家)
企業診断サービス実施促進
19, 34
☆中小企業診断制度構築(開調、専門家)
巡回技術指導サービス実施促進
6, 27, 28, 40
・巡回指導サービス機関の設立・強化支援
企業リンケージの促進
下請振興
13, 15
25, 24, 27, 28
・中小企業振興マスタープランの作成支援(専門家、開発調査)、技術支援機関の強化(プロ技)
市場情報の提供(逆見本市開催等)
13, 15
・輸出振興戦略策定支援(開発調査、専門家)
クラスター機能強化
26
・クラスター機能強化計画作成支援(開調)


中間目標2-4 特定サブセクターの育成
    指標:(1)サブセクターの企業数、付加価値生産高、従業者数の推移、(2)輸出額の推移、(3)各種支援制度に対する満足度・活用度の調査結果
中間目標のサブ目標
プロジェクト活動の例
事例番号*
JICAの主たる事業
振興戦略の立案
マスタープラン立案
4, 7, 23
・中小企業振興マスタープランの作成支援(専門家、開発調査)
経営資源の強化【中間目標 2-1 (経営資源の強化) 参照】
技術者の育成
6, 20, 25
・職業訓練校の強化支援、技術支援機関の強化支援
企業診断サービス実施促進
19, 34
企業リンケージの促進
クラスター機能強化
26
・クラスター機能強化計画(開調)
輸出促進
海外マーケット情報の収集
12, 13, 17
・貿易振興機関の設立、強化
×
輸出組合の設立
製品開発・販売促進能力強化
31
・デザイン振興計画(開発調査、専門家)


中間目標2-5 卸売業・小売業
    指標:(1)卸・小売業の企業数、売上高の推移
中間目標のサブ目標
プロジェクト活動の例
事例番号*
JICAの主たる事業
中小卸売業の振興
×
物流効率化
×
IT活用
中小小売業の振興
×
タウンマネージメント支援
×
IT活用(商品提案、販路開拓)
*「事例番号」は付録1.の案件リスト番号に対応。


プロジェクト活動の例:
◎→
JICAの中小企業振興協力事業において比較的事業実績の多い活動
○→
JICAの中小企業振興協力事業において事業実績のある活動
△→
JICAの中小企業振興協力事業においてプロジェクトの1要素として入っていることもある活動
×→
JICAの中小企業振興協力事業において事業実績がほとんどない活動
JICAの主たる事業:
☆→
実施例は数件であるものの、今後の先行例となりうる事業


出典:
独立行政法人国際協力機構(2003年12月)『課題別指針 中小企業振興』






添 付  資 料


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