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基礎知識



カ テ  ゴ リ


協力の歴史

更  新  日


2013/05/02 10:49



分 野 課 題


ジェンダーと開発 共通






主  管  部


経済基盤開発部、ジェンダーと開発課題タスクフォース






ト ピ ッ ク ス

















ジェンダー平等にかかる歴史





 「開発と女性(Women in Development : WID)」
「ジェンダーと開発(Gender and Development : GAD)」の歴史的概念の変遷


1.「開発と女性(WID)」の登場
2.「開発と女性(WID)」から「ジェンダーと開発(GAD)」ヘ
3. ジェンダー主流化


「開発と女性(WID)」の登場

1950~60年代
 開発途上国のための「第一次国連開発の10年」を初めとして、国連を中心に提唱された開発途上国に対する援助の基本的考え方は、経済が成長すればおのずと貧困が解消され、女性にも社会的弱者にも恩恵がもたらされるというものであった。

 1950年代から60年代にかけて行われた途上国に対する支援は、女性の役割は主に家事を担い、子供を生み育てることであるという考え方を基調とし、母子保健、栄養改善、家族計画に関する事業等が中心的に行われた。この時期において、開発とは、女性の主婦・妻・母親としての役割を強化するものであり、女性は、開発の単なる受益者として、見做されていた。実際には、多くの女性が生産を担っているが、そのような役割は、軽視されていたのである。

1970年代
 1970年代になると「開発と女性(WID)」という概念が、提唱され始めた。

 WIDは、経済開発が、女性と男性に異なる影響を及ぼし、特に、女性に公正な便益がもたらされず、時には、負の影響が大きく及んでいることに着目することから始まっているが、それには、E・ボズラップの著書「経済開発における女性の役割」(1970)が重要な契機となった。ボズラップは、女性が経済、特に、農業生産に重要な役割を果たしているにも関わらず、その役割が認識されていない事実に注目した。そのため、女性が、新技術を使うことができなかったり、それに伴って、必要となる技術・技能訓練を受けられず、その結果、事実上女性の経済的機会が奪われたり、自立が妨げられ、女性の地位が相対的に低下して、男女間の格差が、拡大する傾向が生じたというのである。

 1975年に、メキシコで開催された世界女性会議とそれに続く「国連女性の10年」を通じて、途上国の女性たちから、女性の経済面における貢献を認識し、「女性を開発過程に統合する」ことが必要であるという声が高まった。各国援助機関において、女性の地位向上への取り組みが始まると同時に、より効果的な開発を行うためにも、「開発には、女性の参画が不可欠である」と新たに認識されるようになった。

1980年代、
 1980年代になると、各国援助機関において、WIDに関する援助政策が打ち出されてきた。WIDを担当する部署が、次々と設置され、WID専門家の採用も促進される等、組織内の制度化も進められてきた。更に、先進国のみならず、開発途上国においても、女性の地位向上と開発への参画を目的とする政策・研究・プログラムを取り扱うナショナル・マシナリー(注記1)(女性の地位向上のための国内本部機構)や各省庁においても、女性施策を担当する部署等が設置され、国家経済社会開発計画の中で、WIDに関する施策が、相次いで打ち出された。

 しかし、この時期のWID概念は、女性を開発の「対象」とし、男性とは別個に女性だけを対象にしたプロジェクトを行う所に留まっていた。その結果、具体的な活動も、女性のみを対象にした識字教育、職業訓練、母子保健活動、マイクロクレジット、小規模収入向上プロジェクト等が大部分を占めた。地域レベルでは、こうした活動が、女性にとって役立つものであることも確かであり、それらの活動が、現在でも、プロジェクトの重要な構成要因であることに変わりはないが、このようなプロジェクトが実施された結果、女性の負担が増えるという現象も多く見られる。この時期のWIDの考え方に基づく個別のプロジェクトでは、女性はあくまでも経済開発のために「動員されるべき」貴重な「資源」と見做されており、ジェンダーに不平等な既存の社会構造や制度の下に進められる経済開発のあり方そのものに疑問が抱かれてはいなかった。

1980年代以降
 1980年代以降、開発途上国の女性NGOからこのようなプロジェクトに対する批判の声が上がるようになった。即ち、こうしたプロジェクトの出現によって女性に目が向けられたという点は評価されるが、「女性の問題」は「女性が問題」ということではなく、社会におけるジェンダー関係によって生じるものであり、その根源を問わないWIDの考え方は、根本的に問題を解決しないというのである。そして途上国のNGOを中心として、女性のエンパワーメントや女性の自己決定権の確立、ジェンダー平等に向けた動きが、草の根レベルで展開されるようになってきた。ここから「ジェンダーと開発(GAD)」というアプローチが、提唱されていくようになった。



<注記1>
1. ナショナル・マシナリー:政府内組織または民間の全国的な組織。女性に関する政策レベルでの提言、各省庁のジェンダー・WID活動の促進と調整、女性関連活動の促進とモニタリング、情報提供、国際的な情報交換・交流等の中心的役割を果たす。(国際協力事業団(2000)「社会/ジェンダー政策立案・制度強化支援基礎調査報告書」より)

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「開発と女性(WID)」から「ジェンダーと開発(GAD)」ヘ
 WIDが、女性の参加と受益を増すことにより、開発の効果を向上させることを目指していたのに対して、「ジェンダーと開発(GAD)」アプローチは、女性を「開発」の過程に統合するだけではなく、それぞれの社会の中で、ジェンダー格差を生み出す要因そのものを取り除き、女性のエンパワーメントを進め、不平等な社会・ジェンダー関係を変革していくことを目指している(注記2
 

 GADアプローチを取る場合においても、従来のWIDアプローチで行ってきたように、女性に食糧、水、医療サービスや教育訓練等を供与したり、生産資源へのアクセスを向上すること(実際的ニーズを充たす)は、一つの方法として、引き続き必要である。しかし、GADアプローチが真に目指すものは、男女の既存の役割分担や女性を、従属的立場に追いやりジェンダー格差を生み出している既存の社会・政治・経済の構造を変えていく(戦略的ニーズを満たす)ことにある。
 

 具体的には、女性の政治・市民活動への参画促進(女性の議員、各種審議会委員数の増加)のような女性に対する、積極的ジェンダー格差是正措置(ポジティブ・アクション)は基より、女性の法的権利の保障(婚姻、移動、居住の自由、遺産・財産権、労働権、教育権、被選挙権・選挙権等)、社会構造や社会制度(年金、税制)、そのものの改革をも目指す。そのためにも、意思決定過程への女性の参画と共に、お互いを尊重する平等な男女関係を促進する取り組みが不可欠である。
 

 GADでは、更に、「女性」は均質な単一集団ではなく、所得、階級、民族等により、それぞれ異なる利害や目的を持つ多様な集団であることも、考慮しながら対応する必要があると提唱している。


BOX1.1 実際的ニーズ・戦略的ニーズ
 ジェンダー視点からの開発計画策定に大切なことは、女性の役割と2種類のニーズを区別することである。実際的ニーズは、水、医療、雇用のような生活上の不足に関わるものが多い。これに対して、“戦略的ニーズは、女性の従属的地位から生じるニーズで、営んでいる生活により、具体的内容は異なるが、ジェンダーによる分業、権力や支配に関係しており、法的権利、家庭内暴力、男女同一賃金、身体の自己管理に関わるニーズ等である。この充足が男女平等達成には必須である。しかし、これを満たすためには既存の社会関係のあり方を問わざるをえないため、権力を持つ側への挑戦となる。



<注記2>
1.GADアプローチでは、既存の社会・経済の枠組みやその構造、権力関係を問うことが必然化し、既存の体制の中に、既得権を持つ集団にとっては、十分「脅威」となる。そのためGADアプローチが、各国の援助機関や国際機関、途上国政府等に、実質的に受け入れられにくく、WIDを基本にしてきた理由の一端は、ここにあるとされる。(村松安子(1997)「女性と開発理論と政策的課題」有斐閣 P150)

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ジェンダー主流化
 1995年の北京世界女性会議を契機として、「ジェンダー主流化」(メインストリーミング)という言葉が広く使われるようになった。「ジェンダー主流化」とは、GADを開発の重点課題とし、ジェンダー平等を進めるための包括的取り組みであり、ジェンダー平等の視点を、全ての政策・事業の企画立案段階から組み込んでいくことである。これは、全ての開発課題において、女性と男性の両方が、意思決定過程に参画できるようにするという考え方に基づいている。

 「ジェンダーの主流化」は、援助事業だけでなく、開発途上国政府及び援助機関の組織内部においても、行われるべきものである。即ち、組織の上層部にジェンダー平等を推進するための総合的な企画調整及び監視機構を設置し、下部には、各部署にフォーカルポイント(担当者または拠点)を配置するなど、ジェンダー平等の視点が貫かれる体制を整えることがこれに当てはまる。
 

 社会構造や制度には、既に、ジェンダーに基づく偏見が、深く埋め込まれているため、既存の制度に「女性」の要素を単純に付加するだけでは不十分である。「ジェンダー主流化」は、開発援助において、ジェンダー平等を推進するために、女性の参画を促進し、且つ全ての関係者が、現在の組織的、制度的枠組みそのものを批判的に分析し、再構築していくことを意味している。

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出展:国際協力事業団 企画・評価部環境・女性課(2002) 『課題別指針 ジェンダー主流化・WID』






添 付  資 料


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