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課題別指針



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更  新  日


2013/05/17 10:53



分 野 課 題


貧困削減 貧困削減






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経済基盤開発部、貧困削減課題タスクフォース






ト ピ ッ ク ス

















指針1-3    国際的援助動向





引用元: 課題別指針「貧困削減」(2009年9月)の第1章「貧困の概況」(1-3)

国際的援助動向
1. 世界社会開発サミット
2. DAC新開発戦略からMDGs、PRSPへ
3. 援助効果向上への模索
4. 経済成長と貧困削減にかかる議論の活発化
5. 人間の安全保障
6. アフリカ開発会議(TICAD)


1 世界社会開発サミット
 1990年代に、国際開発援助の潮流は、大きな変化を遂げた。1995年に、デンマークで行われた世界社会開発サミットで採択されたコペンハーゲン宣言では、貧困削減、雇用、社会統合を不可分な開発課題として捉え、国際開発援助の再構成を提唱した。その内容は、10項目25の提言に集約されており、初めて貧困を多面的に捉える視点が、国際社会で共有されたといえる。

2 DAC新開発戦略からMDGs、PRSPへ
 世界社会開発サミットを受け、国際開発援助の構造変化は、1990年代後半に加速した。1996年には、日本政府のイニシアティブにより、OECD/DACの新開発戦略が発表され、1998年には、各援助機関、ドナーの開発の取り組みを包括する「包括的なフレームワーク(Comprehensive Development Framework: CDF)」が、世界銀行によって、提唱された。更に、1999年のケルン・サミットでは、重債務貧困国(Heavily Indebted Poor Countries: HIPCs)に対する、債務削減イニシアティブが、最終的に合意された。HIPCsへの債務削減イニシアティブ適用の条件として、世界銀行及び国際通貨基金(International Monetary Fund: IMF)は、途上国に貧困削減戦略書(Poverty Reduction Strategy Paper: PRSP)の策定を、義務付けている。PRSPは、途上国政府のオーナーシップの下、幅広い関係者が、参画して作成するもので、貧困削減に焦点を当てた国の重点開発課題とその対策を、包括的に述べた、3年間の経済・社会開発計画である26。また、2000年には、国連主導のMDGsが取り纏められ、国際社会が、2015年までに達成すべき8つの具体的な目標が共有された。

3 援助効果向上への模索
 東西冷戦終了に伴い、1990年代に入って、先進国は、対途上国援助の政治的動機の主要な一つを失ったこと及びこれと並行して、先進国の多くが、構造的財政赤字の削減に取り組まねばならなかったことから、対途上国の開発援助リソースフローは減少した。こうした先進国の「援助疲れ」傾向が、広く見られる状況の中、絶対的貧困状況の悪化に対応するために、1990年代末には、従来の国際開発援助の在り方を、根本から批判的に見直す動きが本格化した。PRSPやセクタープログラム・アプローチに見られるように、1990年代末以降の援助アプローチは、援助理論や戦略から援助様式や援助手続きまでが、相互に関連しながら、密接にリンクしていることが特徴である。中でも、独自の目標を設定して、人やモノ、サービスを、直接的に途上国に供与する「プロジェクト型援助」に対して、「一般財政支援」は、援助協調の議論の中で、試行的に始められた新たな援助手法として、2000年以降に、活発に議論され始めた。一般財政支援は、貧困が、特に、深刻であり、国家予算全体に占める、援助の比率が高い、サブサハラ・アフリカ諸国を中心に、PRSP等途上国の貧困削減戦略に基づき、包括的な解決を目指して、途上国の一般財政へ援助資金を投入するものである27

4 経済成長と貧困削減にかかる議論の活発化
 成長と貧困削減については、チェネリーらによる『成長に伴う再配分』(1974)、世界銀行の『世界開発報告』(1990)で既に議論がされている。1990年代に入り、経済成長が貧困削減に役に立つとの実証研究が進む一方、経済成長は貧困削減の必要条件であっても、十分条件ではないことが明らかになった28。こうした流れの中でPro-poor growthについての議論が活発化した。Pro-poor growth或いは類似用語であるInclusive growthは、一般的には「貧困削減に寄与するような経済成長」と理解されている。具体的には、経済全体の成長率と同じだけの若しくはそれ以上の貧困削減率が結果としてもたらされることと定義される場合が多い29。Pro-poor growthを実現するためには、初期条件、成長の中身(質、パターン)、成長の成果を貧困層に行き渡らせるための政策(Pro-poor政策)の検討が、重要であることが指摘されている30。但し、何をPro-poor 政策と見做すかについては、未だコンセンサスはない31
 
 経済成長と貧困削減の議論が活発化する中で、OECD/DACの下部機構として、1998年に設置された「貧困削減ネットワーク」(Network on Poverty Reduction: POVNET)でも、それまで社会セクター中心に行われていた、議論の流れを見直し、2002年には「経済成長と貧困削減」を、POVNETが取り組むべき主要課題として、位置づけることとなった。そして2003年には、①インフラ、②農業、③民間セクター開発につき、それぞれタスクチームが設置され、2006年には、インフラ・タスクチームにより「貧困削減のためのインフラ活用指針」が取り纏められた。本指針は、経済成長と貧困削減に対するインフラの貢献を高めるべく、DAC加盟国のインフラ整備支援強化に、方向性を示したものである。そこでは、インフラが、労働生産性を高め、生産、取引費用を減少させること、それにより、支援対象国の経済活動を活発化し、貧困削減に不可欠な成長に貢献するとの考えが示された。また、インフラ整備支援に際し、念頭に置くべき事項を、①支援対象国主導のアプローチ、②貧困層への焦点と裨益、③費用回収・維持管理側面を含めたインフラが提供するサービスの持続可能性、④インフラ整備に向けた資金調達の拡大と資金の効果的活用という4つの点で、整理・提示している32

 また、こうした議論は、アフリカ諸国の開発計画や援助にも影響を与えた。即ち、社会セクターを中心とした貧困削減一辺倒から経済成長を重視した内容へ開発戦略が変わってきたことである。1999年以降、サブサハラ・アフリカ諸国の多くで、策定が義務付けられているPRSPを見ても、第1次PRSPの重点分野は、教育・保健等の社会セクターであったが、第2次PRSPは、経済成長をより重視しており、具体的な例としては、タンザニアの第2次PRSP(2005年)、セネガルの第2次PRSP(2006年)、エチオピアの第2次PRSP(2005/2006年)等がある33

5 人間の安全保障
 「人間の安全保障」という概念は、国連開発計画(United Nations Development Program: UNDP)「人間開発報告1994」で、初めて提案されたものであるが、2001年に、日本政府の呼びかけで、有識者による「人間の安全保障委員会」を設置したことを契機として、より広く国際社会に、その重要性を理解されることとなった34
 
 人間の安全保障と貧困削減とは密接な関連がある35。人間の安全保障の概念は、『グローバル化の進展によって、国境を越えた様々な脅威が増大し、途上国の多くの人が内戦、災害、貧困といった人道上の脅威に晒されている中で、一人一人の人間を中心に据えて、紛争、テロ、災害、環境破壊、感染症等の「恐怖」や貧困、社会サービス・基礎インフラの欠如といった「欠乏」の脅威から人々を保護し、自ら対処する能力を強化することで、尊厳ある生命を全うできる社会づくりを目指す考え方』である。人間の安全保障の概念は、従来からの貧困削減への取り組みに対し、『人々や社会が自らの力では、どうにもならない原因により、安全を脅かされている状況、更には「状況が悪化する危険(ダウンサイド・リスク)」に焦点を当て、貧困(欠乏)が悪化する側面や人間開発を阻害する要因(脆弱性)を考える』といった新しい視点を提供した。リスクをもたらす要因には紛争や自然災害等急速に人々の恐怖と欠乏を増大させる「非日常的な大きな脅威(外的ショック)」と病気や不衛生な生活環境、社会的差別等、人々の「日常生活の中に埋め込まれた脅威」とがあり、これらは人々の貧困状態を、更に深刻化させるものである。
 
 人々を脅威やリスクから守るためには、人々が脅威に自ら対処できるようにする「エンパワーメント」と、政府や国際社会等による人々の「保護」の双方のアプローチを組み合わせることが必要であるし、人々の脆弱性を軽減するには、リスクを予防・軽減する、或いはリスクへの対応能力を上げるといったリスク・マネジメントの考え方が重要となる。

6 アフリカ開発会議(TICAD)
 冷戦の終結に伴う旧社会主義圏への援助資金の増加や先進国の「援助疲れ」の中で、アフリカの辺縁化が懸念されていた1993年、日本政府のイニシアティブでアフリカ開発会議(Tokyo International Conference on African Development: TICAD)が開催された。この第一回会合では「アフリカ開発に関する東京宣言」が採択され、アフリカの政治経済改革の遂行、民間セクターの育成、地域協力・地域統合、アフリカ開発に、アジアの経験を活かすことが合意された。以降、国際社会にアフリカ開発の重要性を訴える場として、5年毎に会合が積み重ねられている。1998年のTICADⅡでは、「東京行動計画」において貧困削減と世界経済への統合というアプローチが採択され、人間開発(教育、保健等)、経済開発(民間セクター育成、農業開発等)、ガバナンス、紛争予防及び平和の定着等、重要分野における具体的な目的と目標を定める必要性が強調された。2003年のTICADⅢでは、アフリカ連合(African Union: AU)より提示された「アフリカ開発のための新パートナーシップ(New Partnership for Africa's Development:NEPAD)」をTICADが支援していくことを確約し、課題の推進に、引き続き取り組むこととしている。

 2008年5月に開催されたTICAD IVにおいては、アフリカ諸国の好調な経済動向を背景に「元気なアフリカ」に向けて協力するという大きな目標の下、「成長の加速化」、「人間の安全保障の確立」、「環境・気候変動問題への対処」を主要テーマとして「横浜宣言」および「横浜行動計画」が採択され、計画の進捗を合同でモニタリングする枠組みが稼動している。他方、2007年来の金融危機(輸出/直接投資/外国送金/観光客の減少、一次産品価格の下落等により)は、サブサハラ・アフリカの実体経済を悪化させ、TICAD IVの前向きな動きが、減速することが、懸念されている。特に、脆弱層や社会セクターにとっては、多くの国で、食料価格が高騰し、特に、脆弱層や社会セクターに、悪影響を与えたため、補助金や価格統制が導入された。また、医薬品のストック不足等の問題も表れている。2009年3月に開催されたTICAD IV閣僚級フォローアップ会合においても、世界的な金融・経済危機の影響で、2015年までのMDGs達成のために、アフリカ向け支援が縮小しないよう、国際社会に対して、継続的な協力が呼びかけられている。


【脚注】
25:①人間中心の社会開発に向けた、経済、政治、社会、文化、法的環境の整備、②各国家及び国際協力を通じた貧困削減、③完全且つ生産的な雇用と、安定的、持続的な生計の確保、④すべての人々の参加により、社会統合実現、⑤人間の尊厳尊重と男女間平等の達成、⑥質の高い教育、保健、医療へのアクセス確保、⑦アフリカ等のLDCにおける経済、社会、人材開発の促進、⑧構造調整プログラムの目標として、貧困削減、完全雇用、社会統合を含めること、⑨社会開発のためのリソース動員と効率的活用の実現、⑩社会開発のための地域間協力の促進
26:2009年4月現在、世界67の途上国で、PRSPが策定されている(I-PRSP;Interim PRSPも含む)。そのうち29カ国で、当初3ヵ年のPRSPが改訂されている。また、傾向としては、内容的に社会セクター重視であった第1世代のPRSPよりも、各国の中長期的な国家開発戦略に即して、柔軟に策定されている。例えば、ベトナムの「Comprehensive Poverty Reduction and Growth Strategy」は、より成長志向の強いものである一方、リベリアのような紛争経験国のPRSPは、平和構築が重要課題のひとつに掲げられている。
27:2006年に、OECD/DACのイニシアティブにより実施された、ベトナムを含む7カ国の一般財政支援共同評価によれば、各国の状況に違いはあるものの、援助効果や効率性、持続性について、一般財政支援は、追加的な援助手法として、妥当であることや一般財政支援により、特に、保健・教育セクターのサービス・デリバリーの改善が、確認された。一方、貧困削減に対する一般財政支援の評価としては、評価対象7カ国中、ほとんどの国で、所得貧困とエンパワーメントに対する一般財政支援の貢献がはっきりとは確認できなかったこと、また、政治リスクを含むいくつかのリスクに対して、手法として脆弱であることが指摘された。但し、これについては、途上国の貧困統計の未整備や貧困削減効果と一般財政支援の投入の因果関係を関連付ける技術的な困難さも同時に指摘されている。(本指針3-3「貧困削減ツールの具体例」の「PRSC」参照)
28:国際協力機構(2003b), p.39
29:GRIPS開発フォーラム(2002)
30:Ibid.
31:「法的・制度的なガバナンスの整備」、「貧困層の社会・経済資本へのアクセスの改善」、「マクロ経済の安定」については、成長を促し、貧困削減に寄与する政策と考えられている。国際協力事業団(2003a), p.49
32:経済協力機構(OECD)/開発援助委員会(DAC)(2006), pp.8-12
33:大野泉(2009), p.1
34:人間の安全保障委員会(2003)では、「人間の安全保障」を「人間の生にとって、かけがえのない中枢部分を守り、すべての人の自由と可能性を実現すること」と定義。
35:国際協力機構(2005)

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添 付  資 料


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