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課題別指針



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更  新  日


2013/04/19 17:12



分 野 課 題


貧困削減 貧困削減






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経済基盤開発部、貧困削減課題タスクフォース






ト ピ ッ ク ス

















指針3-3    貧困削減ツールの具体例





引用元: 課題別指針「貧困削減」(2009年9月)の第3章「貧困削減に対するアプローチ」(3-3)

貧困削減ツールの具体例

 貧困削減に役立つと考えられる5つのツールを紹介する。ここでは、ツールの概要と貧困削減への寄与について簡単に触れることとし、ツールの種類や活用方法、事例等については、実務マニュアルやハンドブック等で、今後、詳細に説明されるだろう。 
※青字部分をクリックすると各項目へジャンプします。

1. PRSC(貧困削減支援融資)
2. マイクロファイナンス
3. 参加型開発
4. ソーシャル・ビジネス
5. キャッシュ/フード・フォー・ワーク  

1 PRSC(Poverty Reduction Support Credit: 貧困削減支援融資)
 PRSCは、途上国が作成したPRSPの実施支援のために国際金融機関が主導して供与する融資である。PRSCは、貧困削減支援融資という名称ではあるが供与される資金は一般財政に入り、貧困削減を直接的に支援するだけの融資ではない。むしろその資金使途・支援対象プログラムの両面において、当該国の開発計画、政策、財政全般を対象とし、その中に、貧困削減の視点を織り込むという、謂わば貧困削減を「主流化」させる支援と言える。英国や北欧諸国を中心とするドナーは、世界銀行のPRSCと協調的に、一般財政に資金を提供し、PRSPの実施を支援している。日本も、これまでにベトナム、ラオス、カンボジア、及びタンザニアにおいて、「貧困削減支援借款」或いは「貧困削減・成長オペレーション」として融資している。

 PRSCの資金使途は財政全般に及ぶため、プロジェクトに比べれば、その支援は物理的に目に見えづらい面がある。日本の「顔」が見えるか否かという視点では、世銀プログラムにのって資金供与をしているだけではないかとの見方もある。また、過去の構造調整融資と同様に、そのプログラムは、一部の国では、依然として、ドナー主導で策定されており、途上国側の意向が、十分に反映されない、或いは政策レベルの抽象的な議論が主であり、開発の現場の実態が、十分に反映されないのではないかとの見方もある67

 他方、PRSCは、最上位計画に連動する資金ツールである。そのため、単に、協調融資者として資金を供与するだけではなく、当該国政府、世界銀行、その他の融資ドナーとの協働によって、関係者間の調整コストを減らし、実効性の高い途上国の貧困削減政策を策定し実施することができる68。また、PRSCの協議プロセスは、各分野の最重要政策課題を特定し、それらの実施を促していくものである。そのため、途上国側各省庁の最新の動向、意向、制約要因等を効率的に把握し、PRSPの策定及び実施プロセス全体をモニターすることができるし、各ドナーの援助方針、実施している貧困削減事業や各種調査(貧困アセスメント等を含む)の情報収集も容易になる。更に、途上国政府との議論が困難な課題(汚職や民主化等のガバナンス問題等)については、PRSCの枠組みで、従来のプロジェクト型援助よりも、高次なレベルでの政策対話をすることができる。

 PRSCは、JICAが強みとしてきたキャパシティ・ディベロップメントと密接にリンクさせることができる。そのためには、一般財政支援とJICA技術協力等との連携を強め、現場の実態を政策レベルに反映させること、また、参加ドナーに対して、途上国のオーナーシップを尊重する姿勢を示すことで、支援の質を改善していくことが重要となる。それは、JICAのプレゼンスを高め、また、その協力の開発効果の向上やスケールアップにも貢献するだろう。

2 マイクロファイナンス
 マイクロファイナンスとは、主に貧困層や低所得者層を対象とする小額金融のことで、融資、貯蓄、送金、保険といった様々な金融サービスの総称である。

 そのうち最も一般的なマイクロクレジット(融資)は、従来無担保でもグループを形成して互いに保証し合い、少しずつ頻繁に返済させる等の手法を用いることによって、高い返済率を確保することができるとされてきた(但し、近年バングラデシュのグラミン銀行でも、これまでのやり方を変えて、グループ保証を前提としないマイクロクレジットの提供を行っている)。一般に、男性よりも女性の方が返済率は高いと言われ、マイクロクレジットでは、女性を主な対象者と考えてきた。借り入れができることは、「信用」という資産を得ることであり、借り入れた資金を使った経済活動を通じて収入を得ることによって、経済面を超えた女性や社会的弱者のエンパワーメントに繋がった例も多い。但し、後に述べるように、このような伝統的なマイクロクレジット像は、近年、大きく変化・多様化している。

 マイクロクレジットが、注目される理由の一つは、提供する組織が採算性を確保しながら、より遠隔地やより貧困な顧客へというように、持続発展的に対象者を広げていくことが、可能である点であろう。また、従来の開発援助の枠組みにとらわれず、広く民間資金を活用することによって規模を拡大し、一層自律的・持続的に金融サービスが提供されるという期待もあり、実際に民間資金が導入されている例が多い。更に、従来マイクロクレジットのサービスに適さないとされてきた最貧困層にも、キャパシティ・ディベロップメント等を通じて、これへの「参加」を促す試みもなされている。

 一方、マイクロクレジットは、高い返済率を確保する仕組みと共に、小額であることからくる一件あたりのコストの高さを補うことができるだけの比較的高い金利が必要となることが多い。また、借り入れの一週間後から、毎週定額を返済する等の手法を取ることが多いため、農業等、収入を得るまでに、長い期間を要する事業を対象とする場合には、条件に工夫が必要となる。更に、近年では、世界金融危機の下で、規制当局ないし資金提供者としての政府の役割の再認識・顧客の権利保護・マイクロファイナンス機関(Microfinance Institutions: MFIs)だけでなく、潜在的顧客やそのグループの能力強化等が課題として挙げられている。

 マイクロクレジットは、事業資金目的のグループないし個人向け融資の他、目的を経済活動に限定せず、住宅や教育のための資金、或いは病気や怪我、事故、災害等のリスクに対応する等、日々の生活に必要な一般的な消費のために、個人向けに資金を提供したり、また、貧困層の限られた資産を守るため、貯蓄サービス等を組み合わせた形での資金の提供がなされたりしている。更に、外部から資金を入れるマイクロクレジットばかりでなく、参加者が少しずつ貯蓄し集めた資金を元に、融通しあう貯蓄・信用組合のアプローチも活用されている69。貯蓄増進は、MFIsにとっての重要な資金源となりつつあると言えよう。

 現在、貧困層に融資の他に送金、保険等を含む総合的な金融サービスを提供することが、重要との国際的認識が定着していることには注意が必要である。特に、都市部や外国へ出稼ぎに出た家族・親類縁者からの送金は、貧困世帯の主要な収入である場合があり、近年では、携帯電話を通じて、従来よりも、簡単に手早くできるようになった送金システムが、途上国で急速に広まりつつある。また、洪水や旱魃等の自然災害、農作物への病虫害や家畜の損失、或いは世帯主の急死等、予期が困難なリスクに見舞われやすい脆弱な貧困層にとって安価で妥当な補償が設定された小口保険(micro-insurance)の開発は、外的ショックに対する保護能力を高めるものとして期待できる。クレジットに対する保険は、MFIsの財務を保全することにも貢献する。

 マイクロファイナンスには、金融としての専門性が必要なため他の支援とは切り離し専門の組織を通じて取り組むことが望ましいとの見解もある。対象者のニーズに応えるためには、プロジェクトの一部として、マイクロファイナンスを使うことが考えられるが、その場合には、当該プロジェクトのセクター、対象地域や集団に関する知見に加え、金融的観点からの精査も重要となろう。マイクロファイナンスは、上手く使えば、貧困削減に効果的で、持続発展性を確保することができるツールである。

3 参加型開発
 参加型開発は、開発の目的・理念として議論される場合と効果的・持続性を持った事業展開のための方法(ツール)として議論される場合があり、この2つは分けて議論する必要がある。目的・理念としての参加型開発は、すべての開発行為は当事者の主体的かつ自主的な取り組みを前提とし、それにより貧困層を含む住民のエンパワーメントを図り、彼らの社会参画を可能とする政策や制度の改善、ひいてはガバナンスの強化を目指すものである。方法論としての参加型開発は、ドナーにとって、事業目標を達成するための手段としての住民参加を意味する。例えば、PPA(参加型貧困アセスメント)、住民の出席の下に実施されるトランセクト、ランキング、マッピング等、一連のPLA(Participatory Learning Action: 参加型学習行動法)メニュー70やコンサルテーション、PCM(Project Cycle Management)において、実施される「参加型問題分析」等も、そのツールの一部と見做すことができる。また、事業実施に際しての住民からの労働や物資の提供も広く参加型ツールに含む場合もある。

 手段、或いはツールとしての参加型開発は、住民参加を促進することで事業対象地域の価値観や社会的文脈に沿ったより的確なニーズや能力の把握、更には、活用可能な現地リソースの発掘や現地に受容されやすい実施方法の検討を可能にする。また、事業実施に関しては、ドナー、行政、住民間、更には、住民内でのコンセンサス形成に資する。同時に、コンセンサス形成過程そのものを分析対象とすることにより、事業実施に影響を与える関係者間の政治力学について、ある程度理解することができる。更に、住民の意見聴取に留まらず、事業実施において、住民の主体性に基づいた労働及び物資提供がなされる場合には、事業に対する住民のオーナーシップをより高め、事業及びその効果の持続性を担保するとの評価もある。他方、時間やコスト面での制約、更には、ツールの選び方、その適用の仕方によっては、参加型手法が形式主義に陥り、地域や貧困層の状況やニーズの浅薄、或いは誤った理解に繋がる可能性もある。また、現地の政治力学に対する理解が不十分な場合には、参加型開発が住民間の争いを招いたり、或いは発言者(往々にして、政治力や経済力を持つ人々)の意見を、発言をためらう者(貧困層や社会的弱者)の意見と同一であると短絡的に解釈する等、結果として、貧困層の真意を汲み取れない場合もある71。参加型開発は、貧困削減を進める上での重要な概念であり、また、アプローチである。しかしながら、手段としての参加型開発を効果的な貧困削減に繋げるためには貧困層を取り巻く政治・社会構造、更には、文化状況の理解が不可欠である。個々の地域社会や集団に適した参加の在り方、即ち、誰が、どのように、どのような形式(直接参加、コミュニティーリーダ等の代表を通じた間接参加等)で、何に、どの程度参加するのかを十分に検討し、事業の実施体制や実施期間等を勘案の上、現実的な参加手法を選択する必要がある。

4 ソーシャル・ビジネス
 ソーシャル・ビジネスの定義は、必ずしも定まったものはないが、一般的には、「社会的な貢献や社会的な課題解決を、主たる目的として、継続的に活動を行うビジネス」とされる。社会性、事業性に加えて、新しい社会的商品・サービスやその提供方法等での革新性や、当該ビジネスを通じた、新しい価値の創出を、その要件とすることも多い72。ソーシャル・ビジネスは、純粋な慈善事業と純粋な商業的なビジネスの間に位置しているとも言える73。途上国の貧困層向けビジネスもソーシャル・ビジネスの中に位置づけられ、BOP(Bottom/Base of the Pyramid)ビジネスとして近年脚光をあびている74。ソーシャル・ビジネスの担い手には、通常の営利企業・ビジネスが社会的な使命のために行うケースから、非営利法人・NGOが、継続的な事業化を求めて、ビジネス的なアプローチを取って行っているケース、或いは当初から、社会的な目的とビジネスを両立させることを目的とした社会的ベンチャー等がある。また、こういった団体・ビジネスに出融資する金融機関等も、ソーシャル・ビジネスの担い手といえる。ソーシャル・ビジネスは、①営利・商業ベースで貧困層に販売(営利型)、②商業ベースより安価な価格で、利益を出さずに貧困層に販売(補助金型)、③商業ベースで貧困層に販売するが、利益を社会貢献活動(雇用創出等)に回す(社会貢献型)の3つに類型化できる。

 ソーシャル・ビジネスの長所は、ビジネスによる一定の収入が得られることから、全面的に、外部の寄付等に依存するケースと比べて、活動を持続的に行うことが容易であり、活動の拡大可能性も高まることである。ビジネスとして実施されるため、費用対効果の意識やモニタリング等も強化され、結果として、活動が効率的に行われることも期待できる。また、一旦ビジネスモデルとして成立すれば、他社や他団体の新規参入もあり得るため、活発な活動展開が行われ、貧困削減のような社会的使命の達成が期待できる。消費者側から見れば、良質な商品・サービスが比較的安価に手に入る、商品・サービス間で、競争が発生し、売り手独占・寡占が解消される等のメリットもある。一方、貧困削減ツールとしてのソーシャル・ビジネスの限界は、例えば提供する財・サービスに関する情報が貧困層に十分に提供されないことがあげられる。或いは貧困層が十分に情報を理解できないために不利益を被る可能性や、労働条件を事前に十分に理解できずに搾取的なビジネスになる恐れがある。更には、購買力が不十分な貧困層は提供される財・サービスにアクセスできず、その恩恵から取り残される可能性等も指摘される。

5 キャッシュ/フード・フォー・ワーク
 貧困問題の解決のためには貧困層を正確に把握し、その貧困層に便益が行き渡るような政策・対策を行うこと(ターゲティング)が重要である。しかし貧困層の特定には、指標の選定の難しさや世帯調査・社会調査の実施等、コストがかかりすぎるという問題がある。キャッシュ/フード・フォー・ワークは、適切なターゲティングをより少ないコストで実現し、貧困層の生活環境整備を図ると同時に食料や生計手段が確保しにくい時期に貧困層の経済的能力・保護能力の更なる低下、即ち窮乏化の罠への転落・深化を防ぐものである。具体的には、農閑期や災害その他で食料・生計事情に問題が生じた際に、耕地・牧場等の開墾、道路・灌漑用水路等の建設や修復、植林等の事業を実施し、地域住民の中で、自主的に労働を提供する者に対し、対価として食料や労賃を支払うものである。こうした事業では、例えば労働集約型の事業の選定や主食用穀物として、カッサバや質的等級の劣る小麦等、劣等財を配給すること、或いは相対的に低いレベルに労賃を設定すること等により、事業の参加者・便益者から、貧困層以外を自動的に排除することが期待される。こうした意味で、キャッシュ・フォー・ワークやフード・フォー・ワークは、セルフ・ターゲティング・メカニズムを有する効果的で効率的な貧困対策・貧困配慮ツールといえ、様々なセクターやスキームの事業で活用できる。但し、実施に当っては、貧困層の参加促進や過重負担の回避のため、生産・生活サイクルとの関係で、季節性等を考慮することが重要である。



【脚注】
67: PRSC等一般財政支援を含む援助モダリティに関する詳細な議論は、例えば大野泉(2005)を参照。
68: 例えば、JICAは、2007年度には、20億円をタンザニアのPRSCに融資すると共に、専門家を派遣している。当該専門家は、タンザニアの第2次貧困削減戦略(「成長と貧困削減のための国家戦略」)の4つの主要課題のうち、世銀と共に「成長と貧困削減」にかかる作業部会の共同議長を務め、成長の中でも、特に、インフラ開発計画の議論の主導的な役割を担っている。
69: 途上国にも、日本で「講」や「無尽」と呼ばれるものと同様の伝統を持つ場合がある。
70: これら3つは、PLAのツールの例。PLAについては、プロジェクトPLA編(2000)や開発教育協会編(2006)等を参照。
71: 批判を含めた参加型開発にかかる議論については、例えば、佐藤寛編(2003)を参照。
72: 経済産業省(2008)
73: J.G.Dees等によるソーシャルエンタープライズの整理
74: C.K. プラハラード(2005)によれば、BOPとは所得階層を構成する経済ピラミッドの底辺にいる貧困層のことを指し、具体的には、1日2米ドル未満で生活している約40億人を指す。BOPビジネスはこうした貧困層を顧客対象とし、彼らを創造的な企業家及び価値を重視する消費者であると認識し、貧困層のニーズや能力に適した財やサービスを提供することにより、利益創出を図りながら、貧困削減に資するビジネスである。

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