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課題別指針



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更  新  日


2013/07/09 10:51



分 野 課 題


貧困削減 貧困削減






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経済基盤開発部、貧困削減課題タスクフォース






ト ピ ッ ク ス

















指針1-1    貧困の現状





引用元: 課題別指針「貧困削減」(2009年9月)の第1章「貧困の概況」(1-1) 

貧困の現状

 過去半世紀あまりに渡る開発援助は、時代によって、その重点を変化させつつも、途上国の経済成長と貧困削減を目指して実施されてきた。特に、1990年代以降、世界銀行を始めとする、多くの開発援助機関が貧困を最重要開発課題と位置づけ、2000年には、貧困削減と密接に関係するミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs) が設定され、貧困問題への国際的取り組みが、強化されてきている。その結果、所得貧困や平均余命、初等教育就学率等において、いくつかの大きな成果が確認できる。例えば、MDGs指標の一つである、所得貧困ライン1日1.25米ドルを基準とした場合 、それ未満の所得で生活する、絶対的貧困層人口の割合(貧困率)は、途上国全体で、1990年の41.7%から2005年には25.7%に減少し、「1990年から2015年の間に、貧困率を半減させる」というMDGs目標は達成可能と見られている。また、初等教育純就学率は、2006年時点で、88%まで上昇し、「2015年までに、すべての子供が、初等教育の全課程を修了できるようにする」というMDGsも達成の可能性が高い

図1-1 貧困率の推移                     図1-2 5歳未満児死亡率
 しかし貧困は未だに解決されていない大きな課題である。貧困率は低下傾向にあるものの、1 日1.25米ドル以下で生活する貧困層は2005年時点で14億人以上いると推計されている。また、所得貧困に限らず、保健指標で見ても、状況は深刻である。例えば、途上国における5歳未満児死亡率は、1990年時点から2006年の間に、1,000人中103人から80人と低下してはいるものの、その減少は緩慢であり、「2015年までに、5歳未満児死亡率を、1990年時点の3分の1にする」というMDGsの達成見込みについては、予断を許さない状況にある。また、飢餓状況を測る一指標である、5歳未満児の栄養状況も、大きくは改善されていない。2006年時点で、1億4,000万人以上の子供が、低体重状態にあり「1990年から2015年の間に飢餓人口を半減する」というMDGsも、その達成が危ぶまれている。(貧困の多様性)
 

 貧困の状況は、国や地域、集団によって大きく異なっている。例えば、サブサハラ地域及び南アジア地域の貧困削減は他地域に比べ遅れが目立ち、貧困率はかろうじて下がってきてはいるものの絶対的貧困層の人口数は、逆に増加している。また、国家間の格差や国内の格差も拡大傾向にある。経済水準上位20ヵ国と下位20ヵ国の格差は、過去40年間で、倍増している。比較可能なデータのある73ヵ国(世界の人口の80%に当る)のうち、1950年代以降、不平等が拡大した国は48ヵ国あり、不平等が縮小した9ヵ国を遥かに上回る10。民族間の格差やジェンダー間の格差も、依然として存在する。

 また、収束しつつあると見られてはいるが、近年の食料・エネルギー価格の高騰は、途上国の貧困状況に深刻な影響を与えた。食料価格の高騰は、自家消費分以上に食料を生産していた一部の層の生活を潤す反面、大多数の貧困層は、そうした余剰生産分を持たないため、諸物価高騰により、負の影響を受けた。また、同時期の石油価格の高騰による肥料や農薬等の価格上昇が、貧困層に大きな負担として、のしかかる結果となった。更に、自家消費用の食料を生産していない貧困層にとって、食料価格の高騰は、生活を逼迫させ、食料の確保を困難にさせた。2008年前半の時点で、食料価格の高騰により、新たに、約1 億人が、絶対的貧困層に転落するという推計も出されている11。 

 更に、2007年に米国に端を発した金融危機は、経済のグローバル化を背景に途上国にも深刻な影響を与え始め、貧困状況の急速な悪化が懸念されている。世界経済の低迷が続く中
12、途上国では、外国投資や海外送金が減少し、また、輸出産品や観光に対する需要が低下している13。貸し渋り現象により、途上国の国際金融市場からの資金調達は、より困難になり、先進国からの援助も、減額傾向となることが心配されている14。こうした状況、は堅調であった途上国の経済成長を、急激に減速させ、途上国政府の財政を逼迫し、結果、既に貧困状況にあった人々の生活を、より困窮化させると共に、新たな貧困層を創出する可能性が高い。実際、金融危機の影響で、2009年中に新たに4,600万人が1日1.25米ドル以下の所得貧困層に転落するという推計や2009年から2015年の間に、毎年平均20万人から40万人総計140万から280万の乳児が、死亡するとの推計も出てきている15。これらは、金融危機以前には、期限内に実現可能と見られてきた、いくつかのMDGsの達成をも危うくする可能性を持つ。また、アジア経済危機時に見られたように、経済面での影響が社会不安や政治的混乱を招くことも懸念されている。
出所:United Nations(2008a)



【脚注】
1:2000年9月、ニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットに参加した147の国家元首を含む189の加盟国は、21世紀の国際社会の目標として、国連ミレニアム宣言を採択した。ミレニアム宣言は、平和と安全、開発と貧困、環境、人権とグッドガバナンス(良い統治)、アフリカの特別なニーズ等を、課題として掲げ、21世紀の国連の役割に関する明確な方向性を示している。ミレニアム開発目標は、国連ミレニアム宣言と1990年代に開催された主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合し、ひとつの共通の枠組みとして纏められたものである。2015年に達成すべき目標とターゲットについてはMDGsを参照。
2:MDGsの貧困ラインは、2007年まで、1日あたり所得1.00米ドルに設定されていたが、2008年より、1.25米ドルに変更。
3:United Nations(2008a), p.6
4:ibid., pp.12-13
5:United Nations(2008b), p.2
6:United Nations(2008a), p.20
7:ibid., pp.10-11
8:1日1.25米ドルを基準とした場合の推計値は入手できなかったが、1日当り、所得1.08米ドルを貧困ラインとした場合、それ未満の所得人口は、1990年から2005年の間に、サブサハラ地域では、およそ1億人、南アジア地域では、2,000万人程増えているとの報告がある。
9:World Bank(2001), p.3
10:ibid.
11:United Nations(2008b), p.2
12:IMFは2009年の世界経済成長率見通しをマイナス1.3%としている。IMF(2009b)「世界経済の見通し(WEO)要旨」, p.1(PDF/435.50KB)
13:IMF(2009a), p.vii
14: ibid.
15:World Bank(2009a), p.1、及びWorld Bank(2009b), p.1

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添 付  資 料


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