印刷用画面へ
課題別指針



カ テ  ゴ リ



更  新  日


2013/05/17 10:50



分 野 課 題


貧困削減 貧困削減

更  新  者


RD 課題部支援ユニット(経済基盤開発部)



主  管  部


経済基盤開発部、貧困削減課題タスクフォース

公  開  日


2013/05/17 10:50



ト ピ ッ ク ス



承  認  者


RD 課題部支援ユニット(経済基盤開発部)












指針2−3−2 JICAの貧困削減協力の考え方 -貧困案件の分類:「貧困対策」と「貧困配慮」-





引用元: 課題別指針「貧困削減」(2009年9月)の第2章「JICAの協力の方向性」(2−3−2)

JICAの貧困削減協力の考え方

「1 貧困削減協力の前提となる環境」 に続き、JICAが考える貧困案件(即ち「貧困対策」と「貧困配慮」)について述べる。

2 貧困案件の分類:「貧困対策」と「貧困配慮」
 JICAは、全案件において事業の貧困層に対する正負の影響を検討し、彼らに被害を及ぼす恐れのある場合、環境社会配慮ガイドラインに沿って、それを是正するための対策を講じる。その上で、JICAでは、第一義的には貧困層を主たる裨益者とする事業やそうしたスキームが組み込まれている事業を「貧困案件」と定義する。貧困案件のうち、貧困率が高い地域や集団、あるいは貧困率と並行して、あるいは別に当該国で貧困地域と指定される地域や社会的脆弱と認識されている集団を支援対象とする事業を「貧困対策」とする。貧困層・地域・社会の貧困層を対象に、能力強化に焦点を当てて支援する「貧困対策」の実行のためには対象を特定する「ターゲティング」が不可欠となる。それが不十分なままでは、貧困対策を目指す意図があったとしても、投入資源が非効率に消費されてしまう(「本指針3−2「貧困削減に対する効果的アプローチ」参照)。

 一方、上記で分類されるような貧困対策でなくとも、途上国国内の政治・経済・社会環境の整備を支援する際、通常は、貧困層・地域もその対象に含まれるはずである。そのためJICAでは、貧困対策と並行して、貧困配慮を行うことが重要と考える。JICAの考える貧困配慮とは、貧困層・非貧困層がともに便益を得るとしても、前者の得る便益が後者に比較して著しく少ないと予測される場合や、追加的な配慮や投資で貧困層の得る便益を増大させることができると予測される場合に対策を講じることを意味する39。即ち、貧困対策以外で、その活動の一部に、貧困層を積極的に利するスキームや事業コンポーネント、或いは事業の実施方法を組み込んでいるもの40を指す。

 例えば、幹線道路網の整備は貧困層にも一定の便益をもたらすが、それだけでは幹線道路から離れた地域に生活している貧困層には十分な便益を生じない可能性がある。もし幹線道路と貧困地域を結ぶアクセス道路が全天候型になれば、農産物の搬出・売却等貧困層にとっての便益は格段に増えるだろう。同様に、発電所や基幹送電線の建設に加えて、地方電化のための配電網が強化され、貧困層向けに、接続費用の軽減措置が採られたり、電気料金が従量制になったりすれば、貧困層にとっての便益は、一層増加する。貧困層が、法・司法の保護を受け易くなるような公的支援・相談体制、銀行の支店が無くても、送金等のサービスが受けられる安価なモバイル・バンキング、貧困層の子弟も教材や制服を受け取れるようにする費用免除措置や奨学金制度、保健所への交通アクセス改善ないし保健所からの巡回サービス等、追加的な配慮や政策措置・公共投資を工夫することによって、貧困層にとっての便益を高めるような「貧困配慮」の余地は大きい。

図2-1:JICAの貧困案件の概念図     


 一般に、貧困層・社会的弱者や貧困地域・社会は、それ以外の人々に比べて、政治的・社会的・経済的・人的に不利な状況に置かれているので、3−2「貧困削減アプローチ」や3−3「貧困削減ツール」を事業の中に、組み込むことによって、貧困対策以外の案件への「貧困配慮」が可能となる。一般的に、貧困配慮は追加的な費用を伴うことが多いが、貧困配慮が、事業目的に必ずしも直接的に合致しない場合であっても、貧困層に大きな便益を生じさせるものや、事業の持続性を向上させる場合には、事業の中に、積極的に貧困配慮を取り込むべきである。
 
 貧困配慮を実施する際には、具体的な貧困配慮活動とそれに必要な投入を検討し、当該案件が、@事業目的との関連で貧困配慮が不可欠と判断される場合、A不可欠ではないが、貧困削減の観点から配慮の実施が望ましい場合、或いはB貧困配慮の必要がない場合のいずれかを判断する。いずれの場合もこの判断は案件形成のできるだけ早い段階が望ましいが、現実には、事業実施過程で貧困配慮のニーズが明らかになる場合も多いため、事業開始後も、貧困層を含む社会への事業のインパクト・モニタリングを継続して実施する必要がある。

 当該事業が、上述の@に該当する場合は、事業実施計画書や案件審査調書、或いはPDM(Project Design Matrix)等の文書に貧困配慮を盛り込んだ事業目的や活動内容等を計画当初より明記すべきである。また、事業開始後に、その必要性が確認された場合には、可能な限り早い段階にこれらの文書を書き換え、事業の中で、貧困配慮が正式に、位置づけられることが望ましい。当該事業が、Aに該当する場合には、貧困配慮の便益と配慮に要する、追加費用を勘案の上、配慮実施の可否を判断する。配慮を実施する際には、上記@の場合と同様、できるだけ早い段階に、各種計画書や調書、或いはPDM等に、配慮の実施について記載する。尚、判断材料となるターゲティングや貧困原因分析等の調査分析に時間とコストをかけ過ぎると、実務的に貧困配慮がし難くなることには注意が必要である。また、貧困配慮は、中間・終了時評価や事後評価の際に、適切に評価されなければならない。

  • BOX2-1 貧困配慮の方策
     貧困層にとっての便益を高めるための「貧困配慮」には、@政策・制度、Aプロジェクト・デザイン、B事業の実施方法等で、様々な方策を組み込むことができる。以下は、そうした貧困配慮の方策の一例。
     【政策・制度面】
         (教育費、保険料、光熱費等の)貧困世帯に対する料金減免措置
         (政策マトリックスに貧困層を利する計画を組み込んだ)PRSC
         法制度に無償の法律相談・法律扶助、慣習的なものを含めた代替的紛争処理の組み込み
     【プロジェクト・デザイン】
         障害者のためのバリアフリー、文化・ジェンダーに配慮した学校建設等利用者にやさしいインフラ・デザイン
         幹線道路建設における貧困層の居住地域への追加的な生活道路建設
         事業実施地域の公有地の一部における土地無し農民への使用許可の付与
         (建設労働者や周辺住民への)HIV/AIDS啓蒙・交通安全啓蒙のソフト・コンポーネント
         マイクロファイナンス導入による貧困層の金融サービスへのアクセス改善
     【事業実施方法】
         貧困層の事業に対するオーナーシップを高める参加型開発手法の活用
         貧困層にターゲティングしたキャッシュ/フード・フォー・ワークを通じた事業実施
         (建設事業における)同一労働に対する報酬の男女間賃金格差の禁止・撤廃などに関する地元業者との取り決め
         事業に関連する各種組合における貧困層の最低参加率の設定

「1 貧困削減協力の前提となる環境」へジャンプ


【脚注】
39:貧困案件のスクリーニング基準については、現在検討を続行中。
40:例えば、マイクロファイナンスやキャッシュ/フード・フォー・ワークなど貧困層の生活の安定化や改善に資するスキームやツールが組み込まれているもの。(本指針3−3「貧困削減ツールの具体例」、および、BOX2−1参照)

指針(目次・全文ダウンロード)へジャンプ






添 付  資 料


- 先頭へ戻る -