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課題別指針



カ テ  ゴ リ



更  新  日


2013/05/17 10:51



分 野 課 題


貧困削減 貧困削減






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経済基盤開発部、貧困削減課題タスクフォース






ト ピ ッ ク ス

















指針2-3-1 JICAの貧困削減協力の考え方 -貧困削減協力の前提となる環境-





引用元: 課題別指針「貧困削減」(2009年9月)の第2章「JICAの協力の方向性」(2-3-1)

JICAの貧困削減協力の考え方
 
 まず、貧困削減の前提となる環境として、マクロ経済の安定化や持続的で公正な経済成長の土台となる経済インフラ整備、或いは政治制度や社会秩序・安寧等、貧困層のみならず、広く途上国の国民を取り巻く環境について解説する。

1 貧困削減協力の前提となる環境
 貧困削減という課題に対して、効果的にアプローチをするには、当該国・社会の貧困層や貧困地域だけを見て、その抱える問題に対応していれば良いというものではない。貧困層・地域を含む、途上国社会の様々な環境が、全体として、改善されない限り、貧困削減の成果を持続的に出すことはできない。また、途上国の国内問題のみならず、グローバル化時代にあっては、国際政治・経済の影響も大きく、米国のサブプライムローン問題に端を発した国際金融危機・世界経済不況が、その原因とまったく関係のない途上国の貧困層にまで強い悪影響を及ぼしているのは、記憶に新しい所である。但し、ここでは途上国内に焦点を当て、「貧困削減の前提となる環境」について、いくつかの例に言及しながら説明する。

 自然環境面では、清浄な大気や水等の自然環境が保護されるべきであることに異論を挟む人は少ないだろう。汚染された大気や水は、都市スラム住民の健康を損ない汚れた海・川・湖は零細漁民の生計を破壊する。気候変動によって、洪水や旱魃の激しさが一層厳しくなれば、元来、脆弱な自然環境に依存して生活している貧困層・地域は、更に、困難な状況に追い込まれる。一方で、生物多様性を含む自然環境の保全努力が、貧困層・地域の生活基盤や利益とぶつかることがあるので、環境保全と貧困削減とのWin-Win関係を作り出さなければならない。

 社会面では、戦争や紛争が無く、社会が安定して、治安が維持され、安全であることが求められる。紛争や治安の悪化は、国民生活や市場経済活動全体を阻害するが、弱い立場にある貧困層は、とりわけ甚大な悪影響を被る。従って、社会の安定や安全は、何よりも貧困層を助ける。一方で、富裕層の住む地域の治安維持が優先されたり、貧困層・地域・社会が、反政府活動や犯罪の温床と見做されて、警察等による治安維持活動が、貧困層の人権を侵害し、生計基盤を破壊してしまったりする怖れもある38

 貧困層の政治・社会参加促進の観点からは、一般的には、民主主義的な政治制度が、望ましいと理解される。しかしそれが社会の安定に繋がるかどうか、選挙に負けた少数者を含む、民意の反映された貧困削減政策が採用・実行されるかどうか、企業家にとって、予測可能性の高い経済政策が、執られるかどうか等、不明点は多い。自由なマスメディアの存在は、腐敗・汚職・不正の抑止、貧困層等社会的弱者の権利擁護に大きな役割を果たすが、メディアがどの程度国家権力に実効的影響を及ぼすかについては即断できない。

 マクロ経済の安定は、貧困削減の大前提である。インフレは、食費や光熱費を高騰させ、蓄えのない貧困層の生活を直撃するだけでなく、彼らの僅かな蓄えそのものの価値を下落させる。また、持続的経済成長による生産や支出の増大が無ければ、雇用は、増えず、貧困層の生活を支える農産物や雑貨は売れず、インフラ整備や社会政策や貧困対策の財源となる国家の税収も伸びない。グローバル化した経済の下では、海外の好不況が、当該途上国からの輸出、当該国出身者から、母国への送金、当該国への旅行者による、観光収入等を増減させ、国民一般だけでなく、貧困層にも、大きな影響を及ぼす。途上国の農産物輸入関税が下がったり、為替レートが、切り上がったり、輸出国で農業補助金が増額されたりすれば、海外から安価な農産物が大量流入し、貧困層を含む農民の収入が大打撃を受ける怖れがあるだろう。

 国全体の基幹となる幹線道路網の建設・改良は、貧困層か否かを問わず、国民全体による運輸交通を活発化し、移動や物流の増加・効率化に貢献する。貧困層は、長距離バスでの富裕層は、自家用車での移動時間が短縮され快適となろう。幹線道路網のおかげで、全国により、早く安価に消費物資が届くようになる。また、物流の効率化はコストの低減という形で、民間企業の生産・流通活動を刺激して経済の規模を成長させ、雇用を増やし所得を引き上げる。企業等からの税収増は、中央・地方政府の財政を豊かにできる。これらの恩恵は、貧困者もそうでない人々も遍く享受することが可能である。国民経済活動を緊密に結びつける幹線道路網の整備は、貧困削減の前提条件である。全国に電気を供給する発電所や基幹送電線の建設も、同様に公共財としての幅広い効果を発揮できる。

 このように社会的な安定、民主的な政治制度、マクロ経済の安定、及び主要な道路や電力源に代表される社会基盤(インフラ)の整備は、多くの人々に、ポジティブな影響を与えるが、その影響の度合いは、人々の所得水準や地域特性等、即ち彼らが「人間としての基礎的生活を送るための潜在能力を発揮する機会が剥奪されているかどうか、社会や開発プロセスから除外されているかどうか」という状況の差によって異なってくる。それ故、このような一般国民対象の環境整備は、貧困削減のための必要条件ではあるが、十分条件とはいえない。
 例えば、幹線道路が貧困層の多く住む町や村から遠く離れていれば、時間短縮や価格低下の便益は貧困層には、一部しか届かないだろう。安くなった物流コストによって、内外からの民間投資が促進されたとしても、企業立地は、幹線道路沿いに限られる可能性が高いので、当該企業や関連産業に、貧困層が雇用機会を得られる可能性は、少ないかもしれない。

 そのためJICAは、貧困対策・貧困配慮案件の形成・実施を積極的に進めていく必要がある(本指針2-3-2貧困案件の分類:「貧困対策」と「貧困配慮」参照)。経済全体の成長が貧困層・地域をも含むものであったとしても、貧困層か否か、都市部か地方部か等によって、経済成長率は一様でない。また、たとえ同じ成長率を確保できたとしても、初期条件が異なるので、政策的な配慮を行わなければ、元来の経済格差や地域間格差の一層の拡大は防ぎ難い。過度の格差は不満の種となって社会の安定を損ない、経済成長の足を引っ張る。それは即ち、貧困削減の前提となる環境そのものを不安定にする可能性がある。このため貧困対策案件の実施は勿論のこと、貧困配慮案件についても、貧困層を利する事業実施上の「工夫」としてだけでなく、途上国全体の持続的な経済成長や政治的安定に資する可能性を持つものである。このことから、貧困対策と貧困配慮の両方の積極的な実施が強く望まれる。

「2 貧困案件の分類:「貧困対策」と「貧困配慮」」へジャンプ


【脚注】
38:国防については、JICAの支援対象ではないが、軍隊が、雇用吸収と若者の不満沈静に重要な役割を果したり、機器等の技術革新の嚆矢となることが期待されていることもある。只、多額の国防予算は、結果的に経済成長のためのインフラ予算や貧困対策・社会福祉予算が、皺寄せを受ける可能性は十分にあろう。

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